大麻所持容疑で慶応の学生が逮捕され、大学理事会が陳謝の会見をした数日後、SFCに行った。その日の朝刊にはSFCの米国人元英語講師が麻薬で国外退去処分になっていたことが報道されていた。大学当局から麻薬問題について、学生に警告が出ているだろうと予想していた。塾長名のA4版の紙が、学生への掲示板に張り出されていた。学生諸君の自覚を促す内容で手短なお知らせだった。
これで学生は危機感と自覚を持ってくれるだろうか疑問に思った。講義の冒頭、塾長の警告を読んだか、と学生に聞いてみた。5,60人いた学生の中で読んだというものはゼロだった。
偶然にも前週の講義で、身の回りで起きたニュースをリポートすることを求めていた。数人の学生が大麻問題をリポートしてきた。中には、「大麻とタバコの違いは何なのか、健康に悪いのは両方とも同じではないのか、分からない」と書いた学生がいた。
SFCには米国で生活した経験を持つ学生が多い。米国では合法(州によっては違法)なのになぜ日本では違法なのか、素朴な疑問を持っている。
私は麻薬については大麻とアヘンの違いも説明できない素人だし、科学的医学的悪影響についてはもちろん語ることができない。だから、こんな話をした。
歴史的に麻薬は侵略と暗殺に深く関わっている。中央アジアには麻薬で暗殺者集団を形成し帝国を築いた歴史がある。ペルシャ語で大麻のことをハシーシというが、それが英語のassassinの語源となった。
英国が中国から香港を割譲させたのはアヘン戦争の結果だった。日中戦争でも日本軍は戦費調達のためにアヘンを利用した。特攻隊は出撃前、麻薬を打って搭乗した。
麻薬は常に歴史の裏側と関係しているし、闇の勢力と深い関わりがある。現代でもその関係は何も変わりがない。
たとえ大麻の人体への健康被害が無視できるとしても、面白半分でやったことが、いつの間にか闇の世界へ通じる玄関に立つことを意味する。つまらない好奇心で諸君の洋々たる人生を棒に振るのはあまりにももったいない。
講義とはまったく関係ないこんな話をした。若者の好奇心に理由もなくふたをすることはできない。大学が学生の自覚を待つというなら、それなりの教育をしなければならない。きちんと話をすれば学生は素直にきく。
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