ホリエモンが逮捕された。水に落ちた犬はたたけ、とばかりホリエモン批判が紙面をにぎわせている。テレビも同様である。この間までさんざ彼を持ち上げていたのは誰だったのか。自民党も同様である。
私もホリエモンには2,3回会ったことがある。これほど有名になる前だった。記者会見で私の質問にまともに答えないから、変な若者だ、と思っていた。だから彼の発言のメモも残っていない。
風説の流布、偽計取引、粉飾決算など証券取引法違反が今回逮捕の容疑事実だが、メディアはライブドアの経営実態をどこまで取材していたのか。エッジという名も知らぬベンチャー時代なら、まだ仕方ないが、テレビ会社買収やプロ野球参入など派手な活動を始めた段階では、各メディアは経営実態に関心を持って当然である。だが、どこも実態を報道しなかった。
かつてルパート・マードックと孫正義がテレビ朝日株を買収した時、朝日は社をあげてマードックとソフトバンクの経営実態を探った。どこかに怪しげなところはないか。もちろん企業防衛的な側面はあったが、メディアの観点からも彼らの経営実態に関心を持っていた。財務諸表などあらゆる資料を集め、経営はどうなっているかを調べた。
昨年ライブドアに買収されそうになったフジテレビも当然そうした取材はしたはずだ。公開された財務諸表だけからでも、専門家なら風説の流布や粉飾決算はある程度分析できる。結果的にフジは1000億円以上払って資本提携することになったので、不正は発見できなかった。取材力不足だったのだろうか。もし分かっていて公表しなかったのなら、フジ経営陣は背任の責は免れないし、メディアとして失格である。
私の認識では、90年代のライブドアは無料でインターネット接続サービスを提供し、インターネット電話を実用化した企業である。乱暴なビジネスをするな、と感じた記憶がある。それがいつの間にかホリエモンに買収され、ファイナンス会社に変身していたから、IT企業として認識はなかったし、なぜホリエモンがITの寵児なのか理解できなかった。昨年フジ買収劇で手にした資金で無線LAN公衆サービスを始めるに当たって初めて関心を持った。このblogでも事業モデルを紹介した。ホリエモンもようやく虚業から実業に参入する気になったかと思っていた矢先だった。今後無線LANサービスがどこに引き継がれるのか、消滅するのか。ホリエモンの行く末よりこちらの方が心配である。
上げておいて下がった落差が大きいほど記事は売れます。社の営業方針としてもまたマスコミ人の個人的なひねた性格としてもとても合います。記事のためにはバカでも何でもスター性のある人物が欲しいのです。多くの場合、持ち上げられると馬脚や本性をあらわします。そこで一気に落とします。本当に偉い人や普通の人、まじめな人、まともな人は売れる記事や番組になりません。所詮、マスコミは覗き趣味で経営が成り立っています。読者もそれを望んでいます。二流週刊誌の記者である私は、この上げ下げでメシが食えています。
投稿情報: 何をおっしゃる同業者! | 2006年1 月27日 (金曜日) 11:49
それは太鼓持ちの記事ばかり書いているようじゃ無理。それに株式の知識がない記者では。経済部記者が張り込むくらいでないとすっぱ抜けないのでは。
投稿情報: saitou | 2006年1 月24日 (火曜日) 18:42