屋根に設置した太陽光発電で自家発電した電力を電力会社が現在の料金に2倍で買い取る制度がスタートするらしい。これで太陽光発電世界1を奪還すると環境大臣は意気込んでいる。だが、果たしてうまく行くかどうか疑問がある。
1キロワットあたり7万円の補助金と固定価格買取制度の導入で、太陽光発電の投資は10年くらいで回収できると政府は見込んでいる。中でも電力会社による余剰電力の買取制度は1キロワット時あたり約50円を想定しているとか。住宅用電力価格は平均で25円くらいだから、屋根で発電した電力は自家消費するより全部売った方がもうかる。どれくらい発電できるか手元にデータはないが、1ヶ月500キロワット時発電できたら、2万5000円の収入になる。
一方電力料金も買取制度で若干値上げされるが、1ヶ月ではせいぜい百円くらいだろう。だから太陽光発電しても自宅で消費したら損だ。200万円ほどの投資で2万5000円×12で年30万円の収益だから利回りは6%。へたな利殖よりはるかにいい。カネの運用先に困っている投資家がどっと参入するかもしれない。空き地に太陽光パネルを並べ、売電目的の投資をするものが出てくるかもしれない。
しかし、こうなる見込みはない。電力会社は自家消費を除いた余剰電力しか買い取ってくれない。しかも売電目的の太陽光発電からは買い取らない。経産省に聞いてみた。「どれくらい余剰電力は出るのか」。実績では半分くらいだそうだ。だが、データは示されなかった。「ドイツでは全量買取なのでは?なぜ全量買取にしないのか」。答えはなかった。
全量買取制度なら10年間の期間限定でも、上に予想したような新規参入が期待できる。しかし、余剰電力だけとなると、晴れた日中はガマンして冷房も暖房も使わず、せっせと余剰電力を出して売るしかない。そうすれば10年で元がとれる。
日中自宅にだれもいない家庭なら余剰は出るかもしれないが、普通に暮らしている家では太陽光発電で余剰電力はそれほど出ない。固定価格買取制度そのものが意味がなくなる。余剰電力だけの買取だから電力会社も認めたのではないか。
固定価格買取制度はだれのための制度なのか。売電目的の投資家のためでもなければ、環境問題に協力しようとする一般家庭のためでもない。
自家消費した分にも買取価格上乗せ分を補給する方式、つまり電気料金を割り引く方式にしないと太陽光発電は普及しないのではないだろうか。売電目的の場合は買取価格を引き下げ、まじめに発電した人を優遇する制度にすることも可能ではないか。
11日の朝日新聞夕刊環境面にこの問題の特集が載っていたが、10年で償却できることを強調するだけで、腰が引けている。
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