行政刷新会議で次世代スパコンが事業見送りに仕分けされた。その理由に、この計画は巨艦巨砲主義に陥っていないか、世界1を目指す必要はない、などがあげられた。どの委員が発言したのか、同会議の資料からは分からないが、「ちょっと待ってよ」といいたくなる発言だ。
巨艦巨砲主義というのは、先の戦争で世界は航空機戦争の時代に突入していたのに、大鑑巨砲主義を信奉する海軍が戦艦大和、武蔵を建造し、米空軍機の餌食となった歴史的事実をさすが、次世代スパコンは果たして時代遅れの戦艦大和なのだろうか。日米は1980年代以降スパコンで抜きつ抜かれつの開発競争を繰り広げてきた。当時では思いもよらない計算速度を実現している。現在の最速スパコンより10倍速い世界最速を目指すのが次世代スパコンである。これまで日本のスパコンは50年後、100年後の地球環境を予測することなどを可能にした。スパコン以外にこのような予測計算がより速くできる方法があるなら、大鑑巨砲主義といってもいいが、そういう指摘はなかった。とんちんかんな意見としかいいようがない。
世界1を目指す必要があるのか、という意見も、おかしい。現在スパコン世界1は米国である。米国に依存していればいいのだろうか。米国はかつて世界1を日本に奪われて奮起した。日米が競争したからここまで進歩した。米国は軍事的にもスパコン世界1は譲れないと考え、日本のスパコン開発に注目してきた。スパコンは軍事的にも日本の安全と大いに関わっている。米国のスパコンに頼っていたら日本の安全もままならない。米国依存からの脱却を主張する民主党の意見とも矛盾する。
次世代スパコンが国民の生活にどう役立つのか、数百億円の税金をかける意義はどこにあるのか、という意見には政策担当者、開発当事者は答える必要があるが、仕分け人を説得できないで国民が納得するわけがない。科学技術の開発には、何の役に立つか説明しにくい側面が確かにある。それでも可能な限り説明する義務が開発側にはある。とんちんかんな意見くらい一蹴する説明能力もない文部科学省にはがっかりした。
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