8日の朝日夕刊にマツダのRE(ロータリーエンジン車)が復活するという記事があった。まだ復活することが決まったわけではなく、東京モーターショーに試作車が展示されたことで復活するのではないか、という推測記事である。RE車のマニアは多い。復活への期待が大きいのは分かる。私も昔マツダのロータリー車に乗っていたからだ。
石油ショック直後、私は大阪で自動車業界を担当したことがある。石油ショック後の不況でマツダ(当時の社名は東洋工業だった)は経営危機に陥っていた。ロータリーで再起にかける広島の工場を見てほしいというマツダの要請で工場見学した。この時、目に飛び込んできたのは工場内のあらゆる空き地に並ぶ在庫の完成車の山だった。これを空撮したら面白い写真になると思い、写真部に空撮を依頼した。撮られた写真には工場内にかかる橋の両側にずらり完成車が並んでいるところまで映っていた。
それからしばらくして住友銀行や伊藤忠商事の支援を受けてマツダ再建が始まった。
私も担当が変わった。担当から外れる時、マツダのロータリー車を買った。カペラという車種だった。マツダにエールを送る気持ちだった。
お結び型のローターを回転させるロータリーエンジンは、垂直に運動するピストンを円回転に変えるレシプロエンジンより摩擦が少なく振動も少ない。技術としてははるかに優れている。ただ、燃費が悪い。米国の排ガス規制にもいち早く適合した。だが、タイミングが悪かった。石油ショックでガソリン価格が急騰、ロータリーエンジンは敬遠された。そういう雰囲気の中であえてロータリー車を買った。
確かに燃費は悪かった。だが高速道路を走る時はレシプロエンジンに遜色なかった。この車で大阪と東京の間を何度も往復した。高速道路を走っている時、エンジン音は静かだし、振動も少ない。タイヤと道路の摩擦音だけがうるさかった。
それまで乗っていた車は三菱のギャランGTOという車だった。トラック用のエンジンを乗用車用に改良したサターンエンジンを載せていた。すごい爆音が特徴だった。高速で走ると振動でドアがガタガタ震えた。
GTOに比べたら天国と地獄のような乗り心地だった。車内でひそひそ話ができた。
結局、ロータリー車に10年以上乗り続けた。下取り価格が安く新車に乗り換えられなかった。エンジン周辺のパイプが腐食してついに買い替えた。マツダのセールスマンがよく乗ってくれました、といって他社のセールスより2倍くらいの下取り価格でとってくれた。
新聞記事はRE復活に期待を込めているが、ホントに復活できるのかどうか。マツダ社内の抵抗は強いのではないか。REの燃費がどれくらい向上したのか記事にはなかった。
いまのハイブリッド車や電気自動車ははるかに燃費がいい。REが追いつくのは難しいのではないか。静粛性も優れている。車が近づいてきても気づかないほど静かだ。電気モーターの加速性もいい。REの優れた点をすべて追い抜いたといっていい。
REは確かに懐かしい。懐かしさだけで復活するだろうか。
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