慈恵医大青戸病院で、内視鏡手術のミスで患者が死んだ事件を覚えていますか。手術した医師が警察に逮捕されたあの事件です。患者にも医師にも不幸な事件でしたが、こうした内視鏡下手術ミスを事前に防ぐための情報システムが発足しました。
私の知人である大阪警察病院の城戸哲夫医師の発案です。手術ミスの事例を集め、医師同士で情報を共有して同じミスを繰り返さないことを目指しています。
内視鏡手術は大きく患部を切開することなく、内視鏡を通す細い穴をあけるだけで、手術できることから、患者への負担が少なく、最近手術事例が増えてきています。ビデオ映像を見ながらの手術なので、熟練しないと、ミスにつながりやすい手術でもあります。
城戸さんは、過去の手術ミスのビデオを全国の医師から提供してもらい、デジタル化して、ネットで共有すれば、同じミスの繰り返しは防げるのではないか、と考え、この7月からJESNET(http://www.jesnet.org/jesnet)を立ち上げました。ネットにはビデオ映像と、なぜミスしたのか、どうすれば防げるのか、の解説とともに提供しています。
自らのミスを認めることはなかなかできないことであり、まして他人と共有するとなると抵抗感を持つ人も多いでしょう。それでは、参加に限度があると、JESNETは公開されるビデオでは手術者、患者とも匿名にしていおり、情報にアクセスできる人も、IDとパスワードを付与した会員だけに限っています。しかし、今までに参加した医師は50人足らず、提供されたビデオは8例しかありません。このままでは、ネットを維持することも困難になると思われます。
城戸さんによると、ミス情報が共有されていたら、患者を死なさずに済んだ事例があるそうです。慈恵医大事件のように、経験のない医師が人体実験まがいに起こした事故には、この情報システムは役立ちませんが、熟練医師の指導を仰ぎにくい地方の医師、忙しくて職場を離れられない医師などにとって、パソコンとインターネット環境さえあれば、失敗事例を事前に経験できるこのシステムはかなり役立つのではないか、と私は考えます。内視鏡手術をする医師の技量を格付けする動きもありますが、ミス事例を共有するこのJESNETを併用することで、より効果的な医療事故防止システムになると思います。
城戸さんは、これまで学会での講演や医学雑誌に寄稿するなど広報に努力しましたが、参加する医師はなかなか増えません。広報が足りないのか、ミスを知られたくない医師の心の壁が問題なのか、理由は分かりませんが、どちらにせよ、ネットの存在をもっと知ってもらう必要があります。
そこでこのBLOGを読んだ人にお願いです。この情報システムの存在を知り合いの医師に知らせてください。内視鏡手術をする医師には失敗事例の提供を呼びかけてください。このBLOGを医師会などに転送してください。1件でも医療ミスを減らすために。
junhara
こんばんは。
ニックネームe-doc. (いーどっく)さんという、病院にお勤めの内科医師の方が運営されている「ELECTRIC DOC.」というBlogがあります。
http://e-doc.no-ip.com/blog/default.aspx
その中の、「医療・健康」というカテゴリに、
「またも医療ミス!? 腹腔鏡手術をうけた29歳女性が死亡」というエントリがあります。
http://e-doc.no-ip.com/blog/PermaLink.aspx?guid=4b67864d-b94a-4e6c-95af-97c91046f20f
投稿情報: おぐらじお | 2003年11 月21日 (金曜日) 17:48