4月1日国立大学が独立行政法人化した。大学に法人格を与え、独立させることで、組織を効率化し、ひいては、研究、教育でより大きな成果をあげてもらうことが狙いである。
文部科学省から独立、自らの責任で大学の運営ができることに、だれも反対はない。しかし、果たして独立できるのか、大学人からかねて疑問視する声があった。
一足先に独法化した各省庁の研究機関の中で、優等生といわれていたのが経済産業研究所(RIETI)だが、その行く末に暗雲がたれ込めている。
独立させたといいながら本省が人事に介入したことから、研究所内でごたごたが始まり、ノーベル経済学賞受賞の可能性が高いといわれる研究所長はじめ、有力研究員が相次いで離職しているのだ。
国の研究機関でありながら、政府の政策にはっきり物をいう研究所の姿勢は、民間からそれなりの評価を受け始めていた。ところが、政府の研究機関でありながら、政府の方針に反旗を翻す研究員がいるのはけしからん、と国会議員から圧力がかかり、本省官房がその圧力を跳ね返せなかったことから、ごたごたは始まった。研究者に政治力や行政能力を期待するのは、ないものねだりに近い。本省官房が代わって政治力を発揮、研究所の独立性を守る立場に立たねばならぬはずだが、役所は政治家に弱い。結局、自民党の思惑通りの粛正人事がまかり通った。
研究者は研究だけしていればいいのか。特に社会科学の研究は政策や実社会に適用されてはじめて成果があがるのだから、その時代、時代に政策提言やアピールを出すことは、研究の結果として自然だ。そうした提言や意見が時の政権のご機嫌を損ねたとしても、それを公務員の政治活動として切って捨てるのは、研究の自由を奪う野蛮な行為であることは間違いない。
RIETIでさえ独立を保てないとなると、独法化された大学が独立を維持できるのか、きわめて疑わしい。時の政権や本省からの介入を避けるため、大学が萎縮したり、自主規制したり、するなら、独法化は骨抜きになる。
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