新潟中越地震のような大災害が起きると必ず電話がつながりにくくなる。被災地に全国からいっせいに安否を尋ねるコールがかかるからだ。固定電話にせよ、携帯電話にせよ、同じである。
そのたびにメディアは電話がかかりにくくなっていると報道するだけで、どうすれば安否が確認できるか、を報道しない。
阪神大震災の時、電話は大渋滞した。だが、NTTはつながりにくくなっているので、しばらく待ってからかけなおしてほしい、という要請をするだけだった。メディアも鵜呑みにして、そればかり伝えていた。今回も同じことを繰り返している。NHKは教育テレビで安否情報を流したが、結局はパンクした。
阪神大震災の時、神戸からの発信は比較的つながっていた。特に公衆電話はつながった。被災地内からのコールは少なく、交換局の能力をオーバーすることが少ないからだ。
カリフォルニア大地震の時、米AT&Tは、被災地からのoutboundのコールを待つよう利用者にメディアを通じて訴え、inboundのコールを控えるよう要請した。被災地からの情報を被災地外で受け、その情報を外の関係者に流すようにすれば、直接被災地にコールしなくても安否は確認できる。阪神大震災の時、NTTはそうした要請をしなかった。今回中越地震では、反省したのか、メディア向けリリースに、outbound優先の要請が書かれていた。だが、どこのメディアもその要請をニュースで流さなかった。
お正月のおめでとうコールやサッカーの試合の時、携帯電話が通じにくくなるのと同じです、というしたり顔した評論家の談話を流すだけでお茶を濁していた。阪神大震災の反省に立ってできた171の安否確認伝言ダイヤルは進歩だが、それでも輻輳は起きた。
災害時、メディアの電話は優先電話に指定されているので、つながりにくくなることはない。だから一般利用者の電話に関心が向かないのか、ネットワークのことが理解できていないのか、理由は分からないが、情報を扱うメディアとしてはお粗末すぎる。
安否を確認したいのは人情だし、関係者に被災地に電話をかけるな、電話を待て、というのは忍びないが、現実は逆なのだ。
一方、今回は電気や電話などライフラインが寸断され、連絡がとれなくなった山間部への救援が遅れた。便りがないのはよい便り、ということわざがあるが、危機の時はそれもまた逆である。便りがないのは何かあった証拠と考え、周囲が情報を取りにいくことが正解である。事実を伝えるのがメディアの役割だが、危機の時の情報の流れにももっと関心を払ってもらいたい。
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