ソフトバンクの孫正義社長が1日付朝日新聞に寄稿、国家事業で光ファイバー網整備を訴えている。この春から主張しているユニバーサル回線会社構想と同じで新鮮味はない。主張の要旨は(1)光ファイバー網をNTTから分離し、通信事業者が公平に利用できるようにする(2)6兆円を投じれば5年間で6000万回線を光に置き換えられる(3)光回線の利用料金は月額690円でサービスできる、というもだ。
ADSLで急成長した同社のヤフーBBも最近では光に押され、伸びが期待できなくなっている。伸びが期待できないどころか、光が普及すると従来の銅線の電話回線が光に巻き取られ、回線数そのものが減る。ADSL事業が縮小に向かう運命にある。こうした事情が光の国家事業化構想の背景にあると想像される。
ソフトバンクがNTTと対等に競争して光ファイバーを敷設することは確かに無理がある。だからといってユニバーサル回線会社が必要なのかいくつか疑問がある。
回線会社はかつての公社、公団と同じような非効率な企業にならないか、という問題がある。これは竹中懇談会でも指摘された。
次にブロードバンドは光ファイバーだけで提供されるのか、という問題である。ADSLが光に巻き取られたとしても、無線LANやWiMAXなど無線の高速アクセスが可能になっている。電力線通信も進歩している。光だけがブロードバンドではない。競争でブロードバンド環境を建設することこそ、もっとも効率的で経済的ではないのか。
光の建設でNTTが優位だというなら、他の事業者はNTTから内外無差別の条件で光を借りることをなぜ要求しないのか。かつて銅線の電話回線はNTTが独占していた。他事業者はNTT社内と同一条件で借りられるよう要求し、交渉で競争条件を整備してきた。その結果、ソフトバンクはADSL事業でNTTをしのぐシェアを獲得した。
光の相互接続でNTTが優越的地位を乱用し、高い卸売料金を設定したり、競争事業者に不利な取り扱いをしたりしたら公取委に訴えることもできるだろう。
なぜADSLでできた公正競争条件の整備が光ではできないのか。ボーダフォンを買収し巨額の設備投資を迫られるソフトバンクにとって、光ファイバーでNTTと競争する余裕はもうないのか。孫さんの寄稿を読んで勘ぐってしまった。
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