わが家は次世代DVD機器をまだ買っていない。規格争いの行方を見守っていたからだ、というとかっこよく聞こえるが、実はわが家にはハイビジョンテレビもなく、そもそも高画質録画する需要がなかったからだ。
現行のDVDは早い時期に購入した。当時は規格がたくさんあってどれを選んでいいのか迷った。主にPCのバックアップとデータ保存に使っている。時々PC経由でテレビ録画をするくらいである。80年代初めビデオを買うときもベータかVHSで迷った。結果的にVHSを選択したから、ベータ撤退で損害はなかった。
両方の規格に技術的優劣があったのか、品質にどれほどの差があったのか、は知らないが、消費者がそれらの差を認識して選別していたとは思えない。録画時間がBDの方が長いといわれるが、圧縮技術の進歩で両者の差は実用上はないといわれる。にもかかわらず、昨年すでに両者の販売シェアはBDが優位に立っていた。消費者は果たして賢い選択をしたのか、メディアは検証してほしいところだ。VHS、ベータについても消費者は賢い選択をしたのかまだ判然としない。
BD側の松下電器でDVD事業を推進した四角利和さんがnikkeiBPnetでこんなことを書いている。
「心ある技術者なら、BD方式とHD-DVD方式の両方を再生可能な、あるいは両方を記録再生可能な光ディスク装置の開発に着手しているはずだ。両方式に対応するハイブリッド技術を真っ先に開発し、その特許を握ったメーカーこそが、最終的に次世代光ディスクの技術覇権を勝ち取るのではないかとにらんでいる」
彼がいつこの原稿を書いたのかは知らないが、いまのところハイブリッドは実現していない。かつてDVDに規格が乱立したが、それらが技術進歩つまりハイブリッド技術の開発で統合された経緯についても彼は触れている。東芝が撤退した今、次世代DVDのハイブリッドが市場に登場する可能性はないだろう。
今回のHD-DVD撤退で先に買った消費者は保守、ディスク、コンテンツの供給で不利になるとメディアは騒いでいる。半面早期決着を評価する論説もある。だが、技術の大きな流れに目を配り、消費者の無駄な投資や開発側の資源の無駄遣いを回避させるための報道もあってよかったのではないか。過去数年メディアは規格の分裂を騒ぎ立てたが、こうした動きを促す報道をしてきただろうか。技術音痴のメディアにこんなことを求めるのは所詮、無い物ねだりだろうか。
ハイブリッド、あります。
http://plusd.itmedia.co.jp/lifestyle/articles/0701/08/news001.html
消費者のベストな選択という観点では、日本語入力なんかが面白いかもしれません。
富士通から親指シフトという入力方法が生まれています。通常のqwertyキーボードからの仮名入力/ローマ字入力と比べて効率が高いです。しかし、キーボードが入手しにくいので現在では普及の可能性はありません。一時期は富士通製ワードプロセッサは親指シフトキーボード仕様だったのですが。
日本語入力をソフトウェアの面から効率化しているのがジャストシステムが開発しているATOKシリーズです。予測変換機能があり、意図した文章を入力する際のキータッチを減らすことができます。
http://zapanet.info/blog/item/1229
無料で使える Microsoft の MS-IME とは比較にならないほど入力効率が良く、生産性が上がるのですが、「フツーATOK」というほどに普及しているとはいえません。十分な情報が無いためベストな選択ができない例と言えましょう。
技術開発に関しては、無駄という考え方はそぐわないのでは。技術的な可能性はやってみないとわからない面があります。デファクトスタンダードを確立させるための開発は、決着が付くまで優劣の判断ができません。開発過程で生まれ、スピンアウトする技術もあります。この活動をマスメディアに止めてもらいたくは無いです。
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0505/27/news053.html
投稿情報: FYI | 2008年2 月24日 (日曜日) 14:04