中国が2010年末までに57兆円にのぼる景気刺激策をとるそうだ。総額は中国GDPの16%に当たるというから、白髪三千丈のたぐいの大風呂敷かなとも思うが、金融危機の中、その方向性は正しいのではないか。
かねて今回の金融危機は中国経済を崩壊させかねないと思っていた。米国への輸出依存度が高く、米国の景気後退から生じる国内景気の悪化が、中国国内の格差拡大、というより地方経済の疲弊をもたらし、一部で起きた騒乱状態が全国に波及、混乱状態に陥ることを恐れていた。中国の革命は歴史的に常に地方の反乱から起きている。今回の危機対応を誤れば共産党支配が終わるのではないか、とも予想していた。
景気刺激策の柱は、住宅対策、農村振興、道路などのインフラ整備、医療対策など弱者対策に力点がある。もちろん企業減税や金融緩和もあるが、これで地方の反逆、反乱が未然に防ぐことができれば、共産党政権はまだ持つかもしれない。報道される農村の疲弊、医療の崩壊は日本以上に深刻であり、国民の不満はいかばかりかと内心危ぶんでいた。
都市再開発で住宅を失った住民、子どもを進学させるために多額の借金を負う農民、的確な医療サービスを受けられない患者、高い医療費。どれをとっても、国民の不満は限界に近いのではないか。今回の対策でそれらが解消されれば、中国の安定的発展が期待できる。日本の景気刺激策があまりにもちっぽけで、ばら撒き的要素が濃いのに比べると、中国政府の経済運営のノウハウは日本を上回っているのかもしれない。日本は食糧自給率の絶対的不足、医療従事者の絶対的不足、いつかは必ず来る大地震への対策などが絶対的に足りない。
今回の危機の原因は、米国の行き過ぎた金融自由主義、規制緩和だといわれている。だがそれに乗って成長してきた中国の過大な需要が、原油や穀物の投機を生み出し、バブルを膨らませたともいえる。
中国が内需中心で成長していたら、危機はサブプライム問題だけに限定されていたかもしれない。中国がかつての日本のような工業立国、輸出依存経済立国を目指すのではなく、自立分散型経済を目指すのなら、まだ世界経済は安定を取り戻せるかもしれない。
かもしれない予測ばかりで申し訳ないが、それにしても大風呂敷だから目につばをつけて見守るしかない。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。