知人が「原発を並べて自衛戦争はできない」という小冊子を送ってくれた。著者は山田太郎。原発技術者とある。
福島原発事故が起きる前、2007、8年ごろの出版らしい。地震や津波が原発を襲うのではなく、仮想敵国やテロリストらの通常兵器による攻撃で50基以上ある原発が破壊されたら、日本は二度と人が住めない廃墟になる、という話である。
著者が描く破滅のシナリオは地震と津波に襲われた福島原発事故のケースとほとんど変わらない過程をたどる。まるで今回の事故を予測したようなシナリオである。核燃料は多重に防護されているものの、屋外の非常用電源が破壊され冷却ができなければ危険であること。建屋内に保管されている使用済み核燃料の冷却水が失われたら、放射性物質が環境に放出されたり、場合によっては再臨界にいたる恐れがある、などと指摘している。
水素爆発で建屋が吹き飛ぶくらいだから、いくら軍事的防衛力を強化しても、自爆覚悟の攻撃には防御しようがない。日本の原発は敵国やテロリストに核攻撃のチャンスを与えているのと同じくらい危険なのだと著者は書いている。
津波でも通常兵器による攻撃でも、いざという時、原発は直ちに安全な状態に戻らない。いつまでも崩壊熱を出し続ける。その熱を冷却できなければ、周辺地域は甚大な被害を受ける。それは今回実証された。
この冊子を読んで思い出した。新聞社の入社試験の面接で、編集局長からこう質問された。原子炉に戦闘機が墜落したらどうなるか。その年、九州大学の研究用原子炉の近くに米軍の戦闘機が墜落する事故があった。編集局長はそのことが気になっていたのだろう。私は「戦闘機がぶつかっても安全な設計にはなっていないはずだ」と答えた。大学では演習で机上の設計しかしたことがないから、確信を持って答えたわけではないが、なぜか納得してもらえた。
今回の事故で地震、津波に対する原発の安全対策は進んでも、この著者がいう戦争やテロに対する安全は何も保証されない。福島原発事故は全世界のテロリスト、好戦国家の指導者にかっこうの攻撃兵器、放射性物質を容易にばらまくことを可能にする兵器を提供したのと同じである。米国などは対策済みなのかもしれないが、原発を今後も推進するなら、このことを肝に銘じておく必要がある。
オピ・リバイバル以降、原さんの本領発揮ですね。
投稿情報: kh | 2011年4 月28日 (木曜日) 22:21