原発事故の責任を取って清水正孝東電社長が退任する。後任に西沢俊夫常務が昇格する。平時なら退任も昇格も祝福ものだろうが、この時期に東電社長をつとめるのは辛いだろう。被害者には頭を下げ続けねばならないし、事故の終息にもメドは立っていない。仮に終息にこぎつけたとしても賞賛されることもない。まして役員賞与も退職金も期待できない。東電という会社そのものが存続できなくなるかもしれない。
それでも西沢氏は社長を引き受けた。彼がどういう人物なのか知らないが、この時期に引き受けた心境を聞いてみたい。
唯一新社長が何年後かの退任時に祝福されるとしたら、これ以上の事故の拡大を防ぎ、放射能汚染の除去と事故炉の安定化に成功し、かつ国民が原発の是非をきちんと判断できるデータをすべて公開し、原発をめぐるエンドレスな議論に終止符が打てるようにする。これしかない。もちろん被害者救済は最優先の課題だが、東電単独では背負いきれそうもない。相当の力量がないと乗り切れまい。
これらを実現できたら、21世紀の傑物経営者として歴史に名を残すことができる。それしか社長を引き受ける動機は見当たらない。
廃炉はこれらの課題でたぶん新社長の任期中には片付かないだろう。だが見通しはつける必要はある。経営形態が今後どうなるかわからないが、自社の利益だけにこだわらず、21世紀の電力エネルギー供給はどうあるべきかについての知見、情報を提供してほしい。
損な役回り引き受けた以上、これくらいの覚悟がいる。東電バッシングに耐える心の強さもいる。新社長の仕事を暖かく見守ることなど到底できないが、上に書いたことができないなら、前社長と同様、容赦ない批判にさらされるだろう。
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