私は高いところが好きではない。東京生まれ東京育ちなのに東京タワーに一度も登ったことがない。もちろん、最近できたスカイなんとかにも上るつもりはない。
登山は好きだが、高い山には登らない。富士山にも登ったことがない。登るつもりもない。山高ければ尊し、なんて思ったこともない。
富士山はただ登ることしかない。緑もない。花もほとんどない。見えるのは登山者の列。眼下の景色は工場群だ。
若いころよく山に登ったが、高い山で2000メートル級だ。低い山の方が植物が豊かである。湿原もある。景色が変化するから楽しい。
雪山も登ったことがない。岩山も、ロッククライミングもやらない。学生時代、探検部の後輩がロッククライミングをやりたい、といってきた。探検部では技術がない、指導できない、安全を保障できないから、やるな、と命じた。それでも後輩は谷川岳一の倉沢に登った。そして転落した。その遺体を担ぎ出しに行った。バカなやつだ。そういって切り捨てるのはたやすい。遺体を担いで山道を下る間、目の前に垂れ下がった後輩の腕が見えていた。なぜもっときつく命じなかったのか。何度もそう思った。
今年も山で何人も遭難した。そのたびに救難の人やヘリが出動する。
登山の目標は山頂に立つことではない。無事に家に帰ることだ。
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