文化審議会著作権分科会の報告書案が発表され、パブリックコメントを募集しています。
http://www.mext.go.jp/b_menu/public/index.htm
海外で違法にコピーされたレコード盤、CDが日本に逆輸入されるのを防ぐため、権利者にそのような輸入をストップできる権利を新たに与えるのだそうです。
この著作権法改正が成立すると、安い輸入盤は市場から閉め出されるでしょう。はたしてそれでいいのでしょうか。
著作者の権利を守ることには反対しませんが、消費者が安いレコードやCDが買えなくなることは困りものです。正規のCDと輸入盤の価格には500円くらいの価格差がありますが、ほんとに権利侵害がその価格差を生んでいるのかは説明されていません。
だれもが認める理由の説明もなく、安い輸入盤を閉め出したら、若者はP2Pで違法な音楽ファイル交換に走るかもしれません。平行輸入業者は個人輸入代行業者となって海外の安いCDを輸入するかもしれません。この輸入権は抜け道を奨励する結果になるのは目に見えてます。
そしてもっとも恐れるのは、大量の若者を著作権侵害の犯罪者予備軍にすることです。1920年代の米国の悪法、禁酒法はマフィアを育てただけでした。だれも守れない法律を守れと強制したら、警察国家になってしまいます。
私の理解にちょっと不足している点がありました。
海外で違法コピーされたCDの逆輸入は現行著作権法でストップがかけられるので、輸入権を新設する必要はありません。問題は日本から海外へライセンスされた音楽CDが逆輸入され、国内の市場が荒らされることを事前に防止しようというのがレコード輸入権です。以下は追記です。
レコード輸入権についてマスコミも関心を示すようになった。
http://www.asahi.com/culture/update/1213/001.html
日本のレコード会社がアジア諸国に安くライセンスしたCDが逆輸入され、著作権者の権利が侵害されているから、それをストップするのが新設されるレコード輸入権だ。
なぜアジア諸国に日本の楽曲が安くライセンスされているのか。そのライセンス料がいくらなのかは知らないが、国内のライセンス料より相当安くしないと、アジア諸国の消費者が日本の楽曲を買えない。だから安く出しているのだそうだ。アジア諸国では人件費も安いから、現地生産した邦楽を逆輸入すれば、国内販売価格よりかなり安くなる。もちろん海外への安いライセンス料は日本文化をアジアに広める、という意味もある。
しかし、日本の消費者から見ると、国内より安くライセンスしているのは著作権のダンピング輸出になるのではないか。相手国に被害を受ける事業者がいるわけもなく、ダンピングとはいえないかもしれないが。
レコード会社がアジア諸国に安いライセンスで出してもペイしている、ということは、国内で十分ペイしている逆の証拠である。つまり海外のライセンス料は坊主まるもうけなのではないか、と疑いたくなる。
工業製品では現地生産の安い製品を日本に逆輸入することは当たり前のことになっている。現地生産している企業が逆輸入にストップをかけろなどとはいわない。
ライセンス料の内外価格差を放置しておいて、逆輸入はけしからん、という音楽業界の主張はやはりおかしい。
これとは別に、洋楽の並行輸入にこの輸入権が適用されたら、安い並行輸入盤が日本市場から閉め出されるおそれがある。さすがに並行輸入の洋楽に適用するとはレコード業界もいっていないが、絶対適用されない、という保証はまだない。
コメント
コメントフィードを購読すればディスカッションを追いかけることができます。