わが家についに光ファイバーが入った。NTTのニューファミリータイプという光サービスだ。100メガの光を32人で共有して月額4500円、光終端装置のレンタル料が900円かかる。
申し込んだのは昨年暮れ。NTTはニューファミリータイプを32人に分割しないで、販売しているのは不公正取引だと公取委から排除勧告が出た直後だった。NTTが業者に卸す光ファイバー(ダークファイバー)の価格は5000円ちょっとだから、分割しないで売ったら、ダンピングといわれても仕方がない面はある。NTTは排除勧告を不服として審判に持ち込んだが、12月から、それまで分割せずに販売していたニューファミリータイプの分割を始めたのも事実のようだ。
申し込んだ数日後、NTT東日本の営業マンが自宅を訪ねてきた。この地域で光サービスを販売しているのだという。私は思わずこう叫ぼうとした。「よけいな営業はしてくれるな」。
32人で共有するサービスだから、自宅周辺でニューファミリーに加入する人が出たら、わが家に来る光の速度はそれだけ遅くなる。NTTが営業努力をすればするほど利用者が受けるサービスは品質が低下する。
営業マンが努力すれば、その成果は料金引き下げやサービス向上などにつながって、消費者に還元されるものだが、今回だけは逆になる。こういう営業って何か変だ。しかも、消費者の味方であるはずの公取委が排除勧告を命令した結果起きた珍現象だからよけい頭に来た。
排除勧告が審判で認められたら、ニューファミリータイプの価格は上がるかもしれない。品質は低下する、価格は上がるでは消費者は踏んだり蹴ったりだ。
ダンピングが経済的悪であることは認めるが、今回のケースがそれに当たるかどうかは微妙だ。NTTがインターネットアクセスサービスOCNを始めた時も、公取委の介入で128キロの常時接続サービスが月額34000円から37000円に値上げされたことがあったと記憶している。サービス開始前だったから値上げではないが、予定価格が上がった。
その後のインターネットアクセスサービスの急激な値下げを見れば、当時の34000円はダンピングだったといえるのかどうか。だれもダンピングだとはいわないだろう。
光サービスが今後どういう価格で推移するか、見通すことは難しいが、価格競争が激化することは間違いない。現在でもライバル企業がファイバー1本100メガのサービスをNTT価格よりちょっとだけ高い水準で販売していることを考慮すれば、NTTが100メガを32人に分割して販売することは、利用者から見れば、不当に高い価格で売っていることになる。
正月があけて、光を自宅に引き込む工事があった。その人たちに聞くと、NTT局舎内の分割工事はあまり進んでいないそうだ。「現場の工事が忙しくて局舎にまで手が回らないし、なぜコストがよけいかかる工事をしなくちゃいけないんだ」といっていた。社員にとっても労働意欲の湧かない仕事なのだ。
NTTは局舎内で4分割、電柱上で8分割する計画だが、分割せずにそのまま収容すれば工事費はかからない。光の分割はよけいなコストを発生させるだけだ。
消費者にも社員にも喜ばれないニューファミリーの分岐。喜ぶのは公取委だけというのは、どう見てもおかしい。せめて電柱上の8分岐だけにとどめてほしい。(つづく)
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