かねて日本人は情報について音痴なのではないか、と考えている。その証拠はいっぱいある。
先日地下鉄で、ある業界団体を訪ねた。初めての訪問だったから、団体のホームページで地図をダウンロードしてから出かけた。目的地の地下鉄駅は、地下鉄2本とJRが乗り換えられる大きな駅だった。地図には親切にもそれぞれの交通機関ごとに徒歩何分と所用時間が記されている。地図を手がかりに、訪問先に最も近い出口を探した。
降りた地下鉄駅には二つ出口があった。A1とA2である。地図にはJR2の出口から歩いて2分とある。地下鉄駅にはA1とA2しかないから、A2を選んで出た。JR2はA2の間違いではないか、と考えた。地上に出ても、地図には出口近くにある銀行の支店がない。おかしいと思いつつ、銀行業界は最近、支店を統合しているから、なくなっていてもおかしくない、と勝手に思いこみ、地図にある方向へ歩き出した。しかし、2分歩いても、それらしいビルがない。ビルが面している通りの名前を探したが、なかなか見つからない。自動車向け道路標識をようやく見つけたら通りが違う。あわてて元の地下鉄出口に戻った。それでも分からない。付近の商店で聞いた。○○通りはどこですか。さっき歩いた方向とは逆に信号二つ目だという。その通りにたどり着いて、ようやく分かった。銀行支店の脇に小さな出口があった。ここがJR2という出口だった。
地下鉄駅構内にはJR2出口の案内はどこにもない。JRへ乗り換える人だけがJR2の出口が知りうるようになっていた。ホームページに親切な地図があってもこれでは何の役にも立たない。
こういう誤解されやすい道案内、標識はいくらでもある。地下鉄の出口表示は特にひどい。東西南北の方向感覚が得られない地下では、案内表示だけが頼りだが、まともな案内表示はごく少ない。
私が地下鉄をうまく利用できないのは、田舎者だからだと思われるかもしれない。私はれっきとした東京育ちである。地下鉄には子どものころから半世紀以上乗っている。そう昔は銀座線だけしか走っていなかったから、分かりやすかった。いま地下鉄網がこれだけ発達し、地下街も多い。迷わずに目的地にたどり着ける人はどれくらいいるだろうか。
私は地下鉄の案内標識の誤りに気づいた時、時間の許す限り、駅員におかしい、と訴えてきた。すると駅員はみな不思議な顔をする。はい、改善します、という答えを聞いたことは一度もない。改善された形跡もない。
4月から地下鉄の駅にナンバリングがついた。銀座線の銀座駅はG9だそうだ。地下鉄の吊し広告で知った。そこには外国人向けに駅員が英語で案内している絵があった。何だ外国人向けには努力するのに、大多数の地下鉄利用者が困っている案内標識の改善はしないのか。
私は街角にある馬鹿な標識のデータペースを作ってみたらどうかと考えている。街角だけではない。PCの使い方の説明もなっちゃいない。家電製品でさえ使い方の説明は未熟だ。おかしな情報のデータペースを作り、改善を求めていく運動を始めたい、と考えている。そこから始めないと、ほんとに住みやすい日本のIT社会はやってこない。日本人の情報音痴も直らない。
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