ライブドアの堀江社長がNHKの番組経済羅針盤に生出演した。ネットと既存メディアのあり方についてたっぷり話を聞く前触れだったが、話題はニッポン放送をめぐる株式争奪戦の行方ばかりに終始、新しいメディアのあり方について堀江社長はいいたいことの10分の1もいえなかったのではないか。
番組の最後の方で、既存放送局には、報道という公共性や文化を担う責務があるから、ネット事業と提携して、ビジネスばかりになると不安がある、と司会者。これに対して、堀江社長は、放送の公共性なんて視聴者はだれも考えていないですよ、と失言まがいの発言をしてしまった。
確かに視聴者は、放送から流れてくるものが公共的か文化的か考えながら聞いたり見たりしてはいない。しかし、メディアは送り手と受け手の関係で成り立つ。放送の公共性は公共の電波を使っているからという理由のみで求められるわけではない。送り手の公共性や文化の担い手としての意識は、受け手の信頼を担保するメディアとしての倫理でもある。それらがあるから、視聴者は信頼して、つまり何も考えないで見たり聞いたりしている。
だから、公共性なんてだれも考えていないなんていってはおしまい。こんなことも堀江社長は分かっていないのか、とがっかりした。一方的に流される既存メディアに対抗して、インターネットにはblogや掲示板がたくさんある。しかし、ネット利用についてメディアリテラシーが要請されるのは、まだネットがメディアとしての信頼を獲得できていないからでもある。
放送と携帯やPCが融合すれば、おもしろいことがいっぱいできる、と堀江社長がいくら夢を語っても、メディアの大前提を理解しない経営者として、旧メディアから拒絶されるのは当たり前である。まんまと旧メディアの落とし穴にはまったかっこうである。まだ彼は話せば分かってもらえるという幻想を既存メディアに抱いているようだ。
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