全国の高校で必修科目の理科、社会に履修漏れがあり、多くの生徒が卒業できない事態になっている。いまの学校ってどうなってるんだ。
私の高校時代も理科、社会は選択制だった。理科は生物、化学、物理3科目、社会は地理、世界史、経済を選択した。分類学しか教えてくれなかった生物はとる必要はなかったが、日本史はやはりとるべきだったと後悔した。
履修漏れの背景は、大学入試の受験科目に集中して勉強した方が有利だから入試に出ない科目をおろそかにしたということだ。学校、教育委員会ぐるみで受験対策を重視した結果でもある。
私立大学は昔から入試受験科目が少ない。私が教鞭をとるSFCはたった2科目である。AO入試といって試験のない入試もある。
だからといって基礎的教養となる科目を勉強しなくていいとはいえない。社会、理科の基礎的知識がないと、その後の専門科目、社会に出た時に直面する事態への理解力に不足が起きる。大学生に原稿を書かせると、国語力のみならず基礎的知識、教養の不足するものは一読して分かる。
大学で基礎的教養を教えるには時間が足りない。高校で時事問題まで教える必要はないかもしれないが、歴史や社会の成り立ち、物質や宇宙の構造など基礎的な知識、考え方はたたき込んでおいてほしい。
大学受験は高校生にとって勉強の強力なインセンティブである。受験科目を少なくして個性ある若者を入学させたい大学の戦略も分からないではないが、やはり大学入学までに最低限の勉強をさせておく必要がある。そのためには、大学入試に国数英理社5科目を公立私立を問わず共通に義務化すべきだと考える。共通に義務化すれば履修漏れなど起きるはずがない。
高校時代までの勉強で社会人が必要とする最低限の知識、考え方は身に着く。受験によかれと思って理科、社会をおろそかにした高校は、かえってお粗末な日本人をつくっていることに気づくべきである。教育機関としての社会的責任は受験競争を勝ち抜くことではあるまい。
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