ウオールストリート紙を抱えるダウジョーンズがルパート・マードックのニューズ社に買収されるかもしれない、というニュースが流れた。テレビ朝日を買収しようとしたあのニューズ社である。
インターネットに押され軒並み経営不振になった新聞業界がM&Aの波に飲み込まれるのは時間の問題だった。いずれ日本の新聞業界にもM&Aの大波は押し寄せるだろう。
危機の到来は以前から予測されていた。しかし、決めてとなる対応策がなかなか見つからないのが新聞側の悩みである。
まだインターネットが普及する前の1993年ごろ、私は朝日経営陣の前でネット問題について講義したことがある。結論はネット時代になれば、情報はタダになる、会社はいらなくなる、というものだった。予言通り情報はネットで無料で手に入るようになった。会社は依然として存続しているが、いつ買収でなくなってもおかしくない。
おもしろい話だという感想はもらったが、どうすればいいか、という質問はなかった。つまり危機感をだれも持たなかった。
その後1995年にasahi.comを立ち上げ、各社も後を追ったが、新聞無読層を増やしただけだった。グーグルが台頭しても対抗策が見つからない。販売店まかせだった読者の囲い込みをアスパラクラブで始めたのは2004年になってからだ。ネット対抗策は後手後手に回っている。
このままだといずれ買収攻勢の対象になるのは間違いない。朝日は社主家(村山、上野家)が過半数の株式を持っている。彼らを説得できれば買収は簡単である。外資が接触を図っているという噂は以前からある。資本と経営が分離されているから、いったん経営が悪化し、無配にでもなれば社主家の忠誠を期待するのは無理かもしれない。
新聞経営の独立が言論表現の自由を担保してきたのだが、経営が悪化すれば社主家の離反を招き、経営の独立も言論の独立も危うくなる。そんなシナリオが現実にならないとはいえない。
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