新聞が書かないなら書こうと思っていた。国会承認人事が事前に漏れたら、受け付けないことで、自民、民主両党が合意した。民主党の西岡議運委員長が提案したらしいが、参院で第一党になった民主党の権力欲の誇示でしかない馬鹿げた考え方だと思っていた。報道で人事が変われば、報道の信頼を失わせる結果になり、人事報道を萎縮させることにもなるので、自由な報道への挑戦だといえる。
人事取材はジャーナリストの取材の第一歩である。と同時に、取材のひとつの核心でもある。組織は人事で動き、結果が人事に現れる。人事取材はジャーナリストの力量が問われる仕事でもある。
企業であれ官庁であれ、組織がちゃんと機能していれば、後継者人事は自ずからあぶり出されてくる。人事権を持つトップは後継候補の力量はもちろんのこと組織内外の評価を考慮して人事を決めるからだ。ジャーナリストは組織と利害関係がないから、時々トップから後継候補の人物評価を聞かれることがある。内外の評価、スクリーニングをへた人事は、よほどの独裁者でない限り変更しにくいものだ。取材していれば自ずと人事は分かってくる。一方で人事は秘密を要する。漏れると利害関係者がうごめくからだ。報道するタイミングも計らねばならない。
時々人事で誤報があるのも事実だ。私にも経験がある。記事にしたら人事を定期異動時期から半年延期された。新聞に漏れたことをトップが嫌いわざと延期したのである。人事に変更はなかったが、社長としての権威が傷つけられたと思ったようだ。いってみれば新聞への報復である。そのトップはかえって評判を落とした。
国会も権威ある機関だし、国会承認人事が新聞に漏れたら権威が傷つくと思ったのかもしれない。しかし今回の合意は、人事を半年延期した社長よりはるかに権威主義的で、馬鹿げている。事前に漏れたら変更するというのは、国会に人事の審査能力がないと自ら認めたに等しい。ふさわしくない人物が承認案件で出てきたら、国会が拒否すればいいだけの話である。新聞報道があるかないかは関係がない。
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