食べるものがなかった子ども時代、親によくこういわれたものだ。「水腹も一時だよ。水でがまんしなさい」。子ども心に水がすき腹の足しになるなんて、どうしても思えなかった。
本日は流動食のみ。重湯というヤツだ。昔の雑炊を思い出させる。重湯だけで身が何もない。明日から絶食。手術に備え、腸の中をきれいにするためだ。飲めるのは水だけ。水腹も一時になる。
飽食の時代になって、飢餓の時代の言葉を思い出す。何か皮肉だ。そういえば飢餓の時代にガンなんてあまり聞かなかった。ガンも人間と同じでぜいたくが好きなんだ。人間が質素な生活に戻ったら、ガンは地上から消えてくれるのかな。
考えてみれば、わたしたち戦後生まれ(わたしは1951年ですから原さんよりずいぶん後ですが)はタップリ人工食材を食ってますからね。人工甘味料、人工着色料、防腐剤、凝固剤……。現在のような安全基準もないまま、エセ食品で大きくなったので、そろそろその反動が出てきたのかもしれません。
同時に医療技術が格段に進歩して、不治の病が治療可能になった代わりに、これまでは病気じゃなかった症状が「病気」に格上げされているような気もします。
でも原さんの世代は「飢える」ことを知っている最後の世代。そういう世代の肉体は頑強にできているはずです。わたしの祖母は戦後の混乱期、家族を食べさせるために土木工事でモッコ担ぎをやって腰を痛めましたけれど、105歳で元気です。医療の現場を取材するという抜け目のなさで、ガンを追い返してください。手術の無事を祈っております。
投稿情報: 佃 均 | 2008年6 月14日 (土曜日) 23:47