自分でいうのもおこがましいが、私の手作りイカの塩辛が学生の人気を呼んでいる。今年最後の講義の後、学生の下宿で忘年会をやるから、イカの塩辛を持ってきてくれ、といわれた。数週間前、やはり下宿で芋煮会を開いた時も手製イカの塩辛を持参した。それがうまかったらしい。もちろん快く引き受けた。
近所の魚屋に材料を仕入れに行った。おかみさんがいうには、「今日のイカは小さいから塩辛には向かないよ」。確かに小さい。「でもキモをたくさんおまけしてくれれば作れるよ」と私。身は3匹分キモは6匹分もらってきた。
キモをつぶしてみると量が少ない。いつもなら普通の大きさのイカ6匹分のキモで作るが、今日は2匹分くらいしかない。身と足1匹半を漬けるのが精一杯だった。
一日漬けて味見した。やはり魚屋のおかみさんのいう通りだった。キモが少ないと塩辛のあの独特の風味が出ない。それらしい味はするのだが、作り直すか、学生にガマンしてもらうか。
それにしてもなぜいまどきの若者がイカの塩辛を食べたがるのか。酒の肴としても決しておしゃれな食い物とはいえない。「塩辛ってうまいものなんですね」というところから推測するに、ホントにうまい塩辛を食ったことがないからなのではないか。
市販されている塩辛は、製造業者には失礼だが、いい加減に作られている。めったにうまいものにお目にかかれない。
私のお手製塩辛はけっこう手が込んでいる。薄皮は丁寧に剥ぐ。足は小さく切る。足より身を多く入れる。香り付けにゆずも使う。塩は伯方の塩だし、酒は高級純米酒。ひょっとして料亭で出る塩辛より贅沢にできているかもしれない。
次はどんな伝統和食を食わせてやるか。講義そっちのけで考えている。
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