鳩山政権発足したその日、官僚による記者会見、背景説明、懇談など記者との接触を制限する方針が官邸から示された。今朝の朝日新聞は「会見制限に官困惑」と報じている。何だか他人事のような書き方である。
記事の最後に服部孝章立教大教授の「国民の知る権利を奪う恐れがある」という談話と阪野智一神戸大教授の「とっぴとは思わない」という談話を並列で載せている。まだ新聞として新政権の方針に反対するのか黙認するのか決めかねているようだ。
官僚がメディアを通じて新政権の政策を勝手に解釈したり、誘導したりすることがないようにしたい気持ちは分かるが、果たして官僚たちの口をふさぐことが国民のためになるのか、考え直した方がいい。
大臣や副大臣を何人送り込もうが、各省庁が抱える課題をすべて議員が把握、的確に記者に解説できるとは到底思えない。記者は24時間官僚たちと接触、政策の立案から発生した懸案処理などを取材している。それらの機能を数人の民主党政治化が代替できるはずがない。私の取材経験に照らしても服部教授のいう通りだと思う。
一方、阪野教授は「英国では官僚はあくまで政治家を補佐する立場。政治的中立と守秘義務が課せられ、記者と接触すべきではないとされる」と語っているが、新政権の方針もこうした考え方に立ったものだろう。英国での取材経験はわずかしかないが、官僚に接触し取材した記憶はある。官僚と記者の接触が禁止されているとは思えなかった。
役所の仕事に関して政治家がすべて取り仕切ることなど不可能だし、そんなことをしたら国民生活は混乱する。官依存脱却はいいが、官への取材制限は、かえって密室政治につながる恐れがある。政策決定過程を透明化するという民主党の方針とも矛盾する。
官の政治的中立とは何なのか。どこで線を引くのか難しい。新政権の政策が間違っていた時、それを官僚はメディアを通じて指摘できないとなれば、シンクタンクとしての官僚の存在意義はない。官と政が自由に語り合える関係がいい。国民は政による官へのかたき討ちを求めたわけではない。国民にとって役に立つ官僚はまだたくさんいる。
官僚とメディアの癒着とよく言われますが、何を癒着というのか、定義がはっきりしないのが残念です。官僚と親しくならないとネタはなかなか入手できません。親しくなるの中に酒を一緒に飲むことも入るのはいうまでもありません。代金をどっちが払うかの問題は私の時代はおごったりおごられたりで明確ではありませんでした。ただ酒は飲むな、という程度の基準でした。中川財務相と飲んでいた記者のことはよく知りませんが飲んでいたとしても不思議ではありません。海外で同行している大臣を連れ出し、あちらの要人と会談してもらい、とくダネにするなんてこともしたことがあります。秘書官などと密接な連絡を取り合わないと他社にバレるから、お互いの信頼関係がないとそんな芸当はできません。民主党になってもメディアと政治は切っても切れない関係は続くはずです。その間に官僚が入らないとことはうまく運ばないと思います。要は官をうまく使うかどうかです。
記者クラブの賃料、霞ヶ関ではどうなったのか知りません。NTTのクラブは賃料を払っています。官庁クラブは払ってないのではないでしょうか。官の情報公開は国民の知る権利への義務だと考えられるからです。
投稿情報: junhara | 2009年9 月18日 (金曜日) 12:00
原さんの指摘には大筋合意ですが、素朴な疑問があります。これとは別のテーマかもしれませんが、素朴な疑問です。政・官・報のなれあいは起こっていないのでしょうか。記者クラブに入っていないので分かりませんが、記者懇がその温床になっていることはないのでしょうか。記者クラブはフロア代を霞が関周辺の相場で払っているのですか? 首相・閣僚の外遊に随行するときの運賃や食費、宿泊代は新聞社が出すのですか? 中川さんのもうろう会見の直前、一緒に飲んでいたのはどこかの女性記者だったという話はどこまで本当ですか? もしそれが事実なら、特定メディアと政・官の必要以上の親密さが報道を歪めると指摘されてもいたしかたないですよね。
今回の接触禁止のお触れで、クラブ非加入のメディアも行政官とコンタクトできなくなるわけで、そうなると政治・経済系の記者クラブ非加入の専門メディア(いわゆる業界紙)は取材すらできなくなってしまう。大手メディアだけの問題じゃないと思います。これを機に、政、官と報道の関係がいい方向に改革されることを願っています。
投稿情報: 佃 | 2009年9 月18日 (金曜日) 09:02