チリ鉱山の落盤事故。地底に閉じ込められた33人が生還した。その記録が24日NHKスペシャルで放送された。家族の支えがあったからこそ生還できたのはウソではないだろう。だが生還のナゾは番組を見ただけでは分からない。
40数年前、学生時代最後の夏。私は夕張炭鉱の地底1000mにいた。狭い切り歯(採掘現場)で石炭を掘る労働者のすぐ後ろではズズンという地獄の音とともに落盤が起きていた。炭層を掘り進むに連れ、掘り終わった背後の地層を落盤させ、埋めていく。
薄い炭層。切り歯は立って仕事をするのにやっとの空間しかない。坑道で落盤があったら地上に戻れるかどうか不安になる。案内の鉱夫が切り歯の最も奥に行けという。そこには腹ばいになってやっと抜けられる穴があった。風がやたら強い。そこを抜けてから聞くと、ここが空気穴だという。
地底の作業には空気がいる。空気を送り込むだけでは切り歯に酸素は届かない。空気の帰り道が必要なのだ。その帰り道が狭い穴だった。
チリの鉱山で33人が取り残された場所に、どうやって空気を送り込んでいたのか、どこのメディアも伝えていなかった。湿気と暑さだけが強調されていた。
もうひとつ。救出用トンネルを掘削する途中なぜ地下水が噴き出さなかったのか。地下には必ず地下水脈がある。そこにトンネルがぶち当たれば水が噴出する。もし水が噴き出せば生存者がいる地下の空間は水浸しになる。どうやって地下水脈を避けて救出用トンネルを掘り進めることができたのか。これも報道していなかった。
地下ではガスが噴出すこともある。生存していてもガスの噴出で窒息死する恐れもある。ガスはなぜ噴出しなかったのか。
メディアは生存者の一致協力、家族の声援、神への祈り、リーダーシップなどを礼賛するが、どのように生き延びることができたか、はこれらの問題抜きには考えられない。
チリの鉱山は金と銅を産出する鉱山だから地下水脈やガスの問題は心配する必要がなかったのかもしれない。たまたまそれらの問題がない場所だったのかもしれない。しかし、地底1000mにもぐった経験者にはメディアの報道が納得できない。
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