テレビを見ていたら、偶然、福井東尋坊の風景が映っていた。45年ほど前、私は福井に3年間勤務していた。たから懐かしくテレビをずっと見ていた。東尋坊の隣にある雄島についても奇岩、奇石の神の島だと紹介していた。そう雄島は自然がそのまま残った島なのだ。
福井にいたころ、その島に県が観光道路を造る計画が表面化、地元の高校教師が反対運動をしていた。無人島だから反対運動に賛同する人も少なく、ある意味で孤立無援だった。
私もあまり関心がなかった。観光で地元が潤えば結構なのではないかと考えていた。ところが私の考えはひっくり返された。そのきっかけをつくったのは反対運動をしていた人ではなく、私がよく通っていた県立図書館の司書だった。いつも福井の歴史文書の話をしてくれる人だった。
その人がなんと雄島神社の宮司さんだった。彼の意見は、雄島は神の島、観光にはなじまない、地元の人の心の問題なんだ、ということだった。
私は観光道路建設反対運動のことを記事にした。
それで建設が中止になったのかどうかは分からない。だが結果として観光道路は建設されなかった。
私が大阪に転勤が決まった時、その司書、いや宮司さんが送別会を開いてくれた。雄島神社で二人だけで飲んだ。酒の肴はもちろん越前ガニ。ズワイガニの甲羅に酒を注ぎ、カニの白身を溶かして飲む甲羅酒。いまではとても贅沢な酒席である。
テレビにも雄島神社の宮司さんが出てきて雄島の解説をしていた。彼の名前は司書だったあの時の宮司さんと同じ姓、松村さんだった。だが若い人だった。きっと彼の跡継ぎなんだと確信した。
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