水素を原料とする燃料電池への期待が高まっている。燃料電池は炭酸ガスも窒素酸化物も出さないから環境にやさしい。エネルギーの利用効率が高いから省エネになる。水素は水からも生産されるのでエネルギー供給源の多様化がはかれる。供給地と需要地が接近しているから送電ロスがない。そして新産業が生まれる。いろいろな利点がある。経産省は2010年までに燃料電池で走る自動車を10万台、定置型燃料電池、つまり庭先や軒下に設置する無公害の小型発電所を210万キロワット分導入する目標を掲げている。そして2030年には自動車で1500万台、定置型で1250万キロワット分普及させる方針である。それでも自動車の20%弱、全発電量の数%にしかならない。
私が初めて燃料電池を記事にしたのは四半世紀以上前である。日本が液化天然ガスを本格的に輸入し始めたころだった。天然ガスからは容易に水素が分離でき、それを空気中の酸素と結合させれば、水の電気分解の逆の現象で、水と電気が生産できる。その原理は中学生でも知っていた。あとはいかに安く水素を製造するか、いかに安全に発電、貯蔵するか、を解決することが課題だった。エネルギー効率の良さ、環境負荷の少なさ、エネルギー安全保障の有利さなどは当時から、分かっていた。20年もすれば水素燃料電池社会は来ると想像していた。
だが、あと25年たってもまだ水素社会とはいえるレベルの普及率にはならない。革新的技術が社会や産業を変革するまでに要する時間はだいたい30年だといわれる。内燃機関にしても、コンピューターにしても発明から30年以上を経過して普及している。インターネットもTCP/IPが提唱されてからもう20年経過しているが、これからIP時代を迎えようとしている。これらと比較しても燃料電池の普及は異常に遅すぎるのではないか。GMがネバダの砂漠で燃料電池自動車の連続走行実験に成功したという話は10年以上前に聞いた。
日本ガス協会のホームページによると、燃料電池の原理はなんと1801年に発明されている。実用化第1号は1965年ジェミニ5号に積み込まれたものだった。原理発明からなんと200年以上、実用化第1号から40年が経過している。
良いことずくめの燃料電池だが、いったい何が普及を遅らせているのだろうか。コスト的にまだ化石燃料にかなわないのは理解できるが、原油はこの間にかなり高くなっている。環境問題といい、石油価格の上昇といい、燃料電池への追い風はこれからも強まるだろうが、阻害要因を分析しておくことも必要である。
当時、ガス会社が燃料電池を引っさげて電力供給事業に参入することに電力会社はあからさまな不快感を表明していた。現在は電力事業にだれが参入してもいい時代になった。それでも普及は遅い。ほかに阻害要因でもあるのだろうか。石油メジャーの陰謀説、妨害説もあった。しかし、いまもそうなら、石油メジャーは環境派から袋だたきにあっているはずだ。だから何が阻害しているのか、よく分からない。
経産省は燃料電池の実証実験や技術開発に総額354億円を2005年度に投入する。しかし、阻害要因がいまもあるとすれば、それを分析し、除去しておかないと税金が無駄になる。
はじめまして。
水素社会、本当に来るのでしょうか、
と思いたくなるくらい遅れていますよね。
学生時代に初めて水素のパワーを知ったとき
その可能性等も併せて習い、その未来にワクワク
したものですが…
投稿情報: チョシちゃん | 2005年6 月22日 (水曜日) 13:03
今日2月22日、NTTが携帯電話用の燃料電池の開発に成功したという発表がありました。9時間もつそうです。でもまだ持ち歩くにはちょっと大きいし、どれくらいのコストになるのか分かりません。携帯が3Gになって電池の持ちが極端に短くなったことが、燃料電池の開発促進要因になっているようです。
何が促進要因で何が阻害要因になるのか、難しいですね。
投稿情報: junhara | 2005年2 月22日 (火曜日) 23:47
私も昔から、水素燃料電池には興味がありました。
しかし、本当にじれったい程普及が遅れてますね。
阻害要因が存在するかも知れませんが、促進要因に
乏しいという印象も強いと思います。
民生用、工業用に採用されるには、燃料電池の魅力を
世間が納得できるような技術的進歩に関するブレーク
スルーがもう一段あるような気がします。
阻害要因とは言えないかも知れませんが、
自動車では、ハイブリッドカー、固定型では、
家庭用集中型給湯器として出た、エコキュートなど
やはり一般人には、魅力的商品と言えるでしょう。
水素燃料電池を使用した製品で、これらを超える
魅力的製品が発明されねば、上の商品が単なる過渡期的
なものとは言えなくなります。
エコキュートなど、安い深夜電力と、熱力学的に
当たり前のことですが、使用電力より3倍以上の
熱エネルギーを引き出すヒートポンプを使ってるので
普及すれば、結局エネルギーに関する環境問題にも
貢献するでしょう。
燃料電池がブレークスルーを早く突破できるよう、
皆で応援し、知恵を絞る必要があります。
ところで、原さんのgmail のアドレスに、
私事で、メールを送信していますので、ご高覧
下されば幸いです。
大木。
投稿情報: 大木 | 2005年2 月22日 (火曜日) 23:21