学資保険が満期になったので、とりあえず定額貯金に振り替えようと妻が郵便局に行った。窓口で被保険者である子供の性別を証明する書類を提出しなければ、手続きできないといわれて、満期保険金も受け取れず、振り替えもできずにかえってきた。健康保険証を持っていったのに、それではだめだとはねつけられたそうだ。理由を聞くと、去年性同一性障害者の性別に関する特例法が施行されたことに伴う措置だそうだ。性同一性障害と簡保、郵貯とどういう関係があるのかよく分からなかった。
翌日代わりに私が郵便局へ行った。するとやはり、特例法が施行された去年7月以降、証明書類が必要になったそうだ。健康保険証は契約時点より新しいから契約時点での被保険者の性別を証明できない、旅券とか年金手帳とかないか、といわれた。子供に年金手帳はまだないし、旅券だってない。証明するには戸籍謄本くらいしかないはずである。
性別を証明する書類提出なんて聞いたことがない。保険証券もあるし、印鑑もある。それよりなにより契約者本人が受け取りにきている。しかも定額貯金に振り替えるのだから、簡保、郵貯にとってはお得意さんのはずである。民間銀行ではありえない手続きではないか。こんな官僚的手続きを墨守して民営化なんかできるのか。少し声を荒らげた。
すると健康保険証でいいというではないか。保険証のコピーを取るなど多少時間はかかったが、振り替えはできた。
なぜ性別証明が必要なのか、その後郵政公社に聞いてみた。公社の説明はこうだった。簡保は性別によって保険金額が違うので、満期になるまでのどこかの時点で性別を証明する書類は提出してもらっている。簡単な手続きで保険に入れるので、保険証券に記入された契約時の性別は証明にならないそうだ。新しい健康保険証も同じ理由で証明にならないのだ。
だとすれば性同一障害特例法は関係ないのではないか。契約期間中に性転換した被保険者がいたとしても、契約時の性別で保険金を計算するのなら、特例法施行を理由に証明書類を提出させる根拠がない。契約時にちゃんと説明して性別を確認しておけば済む問題かもしれない。性別で保険金に差をつけることそのものが問題なのかもしれない。結局よく分からない結末だった。いずれにせよ、たいした理由もなく国民によけいな負担を押しつける郵政商法は民営化になじまない。
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