女性国際戦犯法廷を取り上げたNHKの番組の改編をめぐる訴訟で、東京高裁が政治家の意向を忖度した改編だったことを認める判決を出した。政治家の圧力があったかなかったかの事実認定はしなかった。しかし、おおむね妥当な判決だと思う。この番組改編のいきさつを「政治家の圧力で改編」と報道した朝日新聞が、政治家、NHK双方から事実と異なると強硬な抗議を受けたのは2年前の今ごろだ。その後1年近く論争が続いたNHK対朝日のメディア対決も決着がつくだろうか。
去年と一昨年の秋学期、この問題を大学のメディアリテラシーの授業で取り上げた。朝日とNHKの報道をホームページを含めじっくり読ませ、どちらの言い分が納得できるか、リポートを書かせた。一昨年の授業ではいっさい事前の講義なしでリポートさせた。朝日OBである私の講義を聞いてからでは、学生にバイアスがかかると判断したからだ。
結果は、どっちもどっち、ケンカ両成敗的リポートが多数を占めたが、どちらの言い分が納得できるかについては、圧倒的にNHKに同情する意見が多かった。
去年は、今回の判決とほぼ同じ趣旨の講義をしてからリポートを書かせた。もちろんメディアにとって権力からの独立は生命線であるという趣旨を付け加えた。その結果、NHK対朝日の支持率は逆転、朝日がやや上回った。
番組改編をめぐる問題は、朝日の報道が事実であるかどうか、取材の方法が適正だったかどうか、取材過程を明かせないのはなぜか、といった点に注目が集まった。だが、メディアのよって立つ基盤はあらゆる権力からの独立であり、それが民主主義を支える重要な柱である。それが問題の本質であることに、学生たちは思いが至らない。講義を聞いて初めて気がつく。一昨年と昨年の違いがそれを示している。メディアと権力の関係を考えたことがない学生が実は多いのである。そのことの方に私は驚いた。
若者は素直で正義感が強い。間違った報道をするメディアには厳しい。自分で情報が集められるインターネットというメディアを手にしたからよけいその傾向が強い。
何がことの本質か。メディアはどうあるべきか。メディアと権力について踏み込まなかったこの判決だけでは若者に理解させることは難しい。
一言主さん
戦時中は全メディアが統制下にあったわけで、朝日新聞だけが権力に屈したわけではありません。戦時下、朝毎読とも部数を伸ばしたのは事実です。また最も軍部ににらまれたのも朝日です。
メディアの独立というのは口でいうほど簡単なことではありません。権力にすり寄って利益を得ようとする人、組織はいつの時代にもいます。メディアの独立もだから危ういのです。神話にすぎないと断じても何も始まりません。読者が監視する必要があります。
投稿情報: junhara | 2007年1 月31日 (水曜日) 03:13
メディアのよって立つ基盤はあらゆる権力からの独立であり、それが民主主義を支える重要な柱である。
ということはあり得ない
朝日新聞が,今日の地歩を築いたのは,戦争中,軍に協力して自社にパルプを供給することに成功したからだ
その,見返りに大本営発表を繰り返し,多くの国民を殺した
ジャーナリズムの独立性は,神話に過ぎない
投稿情報: 一言主 | 2007年1 月31日 (水曜日) 01:09