このブログでも以前書いたことがあるが、慶應大学SFCの大岩研究室で1年半続いたコラボラティブ・マネジメント型情報教育がこのほど終わった。産業界から派遣された若いSEがプロジェクトマネジャーをつとめ、学生が情報システムを実際に構築する産学共同の情報教育プロジェクトである。ユーザーに使ってもらえる情報システムをつくることが目的だった。どんなものができるのか、当初不安はあったが、若いSEにはプロジェクト進行上の問題点が体感でき、学生には情報システムというモノつくりの喜びとそれに必要な勉強は何かを実感できたのではないかと考えている。そして結果的には案外使えるものができた。
その中のひとつが近所のマッサージ治療院の要請で開発した予約システム。客はPCでも携帯でも予約状況が確認でき、治療院は紙の予約表を追放、何度もかかってくる予約申し込み電話の応対が省けるようになり、感謝していた。噂を聞きつけた近所の美容院が「うちにもほしい」といっているそうだ。
この教育プロジェクトの評価委員を委嘱され、進行を見守ってきた。予約システムについても、既存の無料の予約システムをなぜ応用できないのか、サーバーや回線費用を入れると治療院の負担にならないか、などと注文をつけてきた。教育の一環だからコストを度外視してつくられているので、商用化できるかどうかはまだ分からない。しかし、学生の人件費をゼロとすれば、中小零細企業が使える情報システムを構築できる可能性はある。全国の大学が周辺の商店や零細企業の役に立つ情報システムをこの方式で開発すれば、日本のITの底上げになるのではないか。
このほか、中国語教師のための添削指導採点システムや音だけで遊ぶ映像のないゲームなども開発された。
情報弱者でも使えるシステムを各大学が開発、地域に提供すれば、広がる一方の情報格差を縮める効果が期待できる。学生は技術力を高め、若いSEはマネジメント力をつけ、地域は便利で使いやすい情報システムが手に入る。三方一両得のプロジェクトだが、政府の補助金は今年度でうち切られ、プロジェクトが継続する予定はない。
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