大手都市銀行がモバイルサービスに進出することを検討しているらしい。消息筋から聞いた。銀行から確認はとっていない。
モバイルといっても携帯電話に進出するわけではない。携帯電話会社から回線を借り、独自の端末で独自の金融関連の通信サービスを提供する計画だそうだ。いわゆるMVNO(仮想移動体通信網)というサービスである。ウイルコムからPHS回線を借り、データ通信でMVNOを展開している日本通信が、第3世代でも独自のモバイルデータ通信サービスを提供するため、ドコモに回線開放(相互接続)を求めていたが、このほど接続交渉が不調に終わり、総務省に裁定を申請した。この裁定の結果次第で、通信事業者でなくても、つまり自ら回線を持たなくても、独自のモバイルサービスが安く提供できる可能性が開ける。こうした情勢変化を見越して銀行業界がモバイル進出を検討している模様だ。端末も今後メーカー直販が可能になることも追い風になる。
安い端末と安い通信コストが実現したら、モバイルバンキングサービスがどう変わるか、予測はできないが、預金口座と連動したお財布ケータイ的決済機能を持つ端末などが容易に実現できる可能性があり、リテールバンキングの有力な武器になることは間違いない。このほかCATV業界からMVNOに進出する動きもある。
総務省は新たな周波数の割り当てで新規参入を促し、モバイル市場の競争環境を整備してきたが、モバイル利用料金は期待ほど安くならなかったことから、同省は他業界からのMVNOによる参入を期待しており、裁定ではMVNOとの相互接続をドコモに求めるものと見られる。
佃さん
コメントありがとうございます。
昔、銀行が電子マネーに進出しようとしてみごとに失敗しましたよね。チャージと決済機能の端末が別々に必要で使いにくかったからだと思います。
モバイルならチャージも決済もひとつの端末ですみますから、使い勝手は格段によくなるはずです。
このままだとスイカやその他の電子マネーに銀行の潜在的顧客を奪われるのは目に見えています。いま進出しなかったら銀行はただの金貸し業に成り下がりますね。
金融業はもともと情報産業です。ICTにも強かったはずです。しかし、失われた10年にかつての情報センスはどこかに飛んでしまったんでしょう。特に経営者層の情報音痴は救いがたい。だから今度のモバイル進出も失敗するかもしれない。
投稿情報: junhara | 2007年7 月14日 (土曜日) 00:20
1980年代に都銀と証券の垣根が低くなる(債券を銀行が、預金を証券が扱えるようになる)という話のとき、あるいは情報産業に異業種が参入してきたとき(例えば新日鉄が半導体やコンピュータ製造を始めたりしたとき)から、「情報産業とは何ぞや」の議論がスタートしていました。コンピュータとネットワークを使って何がしかの収益をあげるという点でいえば、ヤマト運輸はその先駆けだったと思います。宅配便業者は運送業でありながら、サービス業に転換したわけです。コンビニは小売業ですが、やはりサービス業化することによって社会的なポジションを確かなものにしました。
ですから金融機関が携帯電話分野に出てくるのは、決して驚きではありません。彼らこそ、真の情報産業だとさえいっていいでしょう。莫大な資金を投入できる点において、あるいは社会のインフラを握っている点において、さらに政治力において、楽天やヤフーも太刀打ちできない。既存のICTサービス業が「情報産業」と名乗りながら社会・経済に変革をもたらすことができないのは、ICTという技術偏重の世界に閉じこもっていて、他産業に参入する姿勢すら見せていないからじゃないですか。金融業は無理でも、得意のICTを活用して飲食業とか流通業の分野に参入して変革を起こすとか、あってもいいと思います。そんなことを思いました。
投稿情報: 佃 均 | 2007年7 月13日 (金曜日) 18:32