NHKの報道を担当する職員がインサイダー取引の疑いがかけられている。事実ならジャーナリストの風上にも置けない。しかも一度に3人も容疑者が出た。日常的に行われていたとしたら重大である。
私がいた朝日の経済部は昔から株取引は禁止されていた。インサイダー取引規制もなかったし、社内規則などの成文法もなかった時代だが、だれも破るものはいなかった。従業員規則に盛り込まれたのは、最近である。
今回の事件は規則がなかったから起きたのか、それともNHK職員のモラルが低下したためなのか、どちらなのだろう。
成文法はなくてもわれわれは株取引はしなかった。規則以前の職業倫理の問題だと思っていた。ジャーナリストの倫理が揺らいでいるのだろうか。
ジャーナリストは一般の人より高い倫理観が求められるといわれる時代になった。職業上知り得た情報で私腹を肥やしていたら、だれもジャーナリストに真実を話さなくなる。報道機関の自殺行為であることはいうまでもない。
ジャーナリストとて人の子。人格者もいれば普通の人もいる。報道機関はより高い倫理観を持った人をどうやって募集、育成したらいいのか。倫理観テストなんてものがあるのだろうか。多分そんなふるい分けはできないだろう。だとすれば、職員の中に倫理観の高低があっても不思議ではない。
ルールを細かく決め、罰則を厳しくすればいいのだろうか。規則でがんじがらめにしたら、記者の自由闊達さは失われるだろう。社内の自由な情報流通は報道機関の最低必要条件なのだから。
報道に携わる人に高潔な精神を求めることはたやすい。だが、彼らの高い倫理観は何によって担保されるのだろうか。武士は食わねど高楊枝などと精神論では不十分だ。一定の身分保障というか、出来心を起こさなくて済む身分の安定も必要だろう。合理化、合理化で明日の身分も怪しくなると、つい出来心がのぞくこともないとはいえない。
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