鳩山政権の打ち出した官僚の記者会見禁止が一晩で撤回された。新政権のメディア戦略に不安が残る。一方、岡田外相が外務省記者クラブを開放する考えを表明した。フリーランスのジャーナリストも外相会見に出席できるらしい。
官僚による記者会見禁止に敏感に対応したのは外務省だった。在外公館の大使による定例の記者会見を即日見送ったが、すぐ復活させた。海外情勢を国民に知らせる重要な役割を果たしているし、国内ばかり見ている政治家には到底できない会見だから復活させるのは当然である。
だが記者クラブ開放はどこまで開放するのかはっきりしない。岡田外相は他の省庁の記者クラブも右にならえするはずだといっているが、記者クラブ側の抵抗が予想される。今朝の朝日はこの問題を報じていない。
記者クラブ開放問題はいまに始まったことではない。日米経済摩擦が激化した80年代半ばころからあった。海外プレスも各省庁の記者会見に出席させろという圧力がかかった。当時、通産省記者クラブのキャップをしていて輪番制の記者クラブ幹事もしていた。日米摩擦に海外プレスが関心を持つのは当然であり、日本語での質疑を条件に受け入れた記憶がある。会見で通訳を介して質疑をしていたら時間がなくなるからである。しかし、この条件を守った外人記者はほとんどいなかった。それ以後通産記者クラブ開放問題はどうなったのかは知らない。
こんなこともあった。消費者団体代表が何かの問題で記者のみなさんに聞いてほしいことがあると幹事の私に電話してきた。会見室を使わせてくれと通産省広報に頼んだが、施設管理権を盾に、利用を拒否された。仕方なく、記者クラブのソファーで有志だけで話を聞いた。
通信自由化後のNTT記者クラブでも開放問題がずっとくすぶっていた。持ち株会社移行と分社化の際、内外無差別の開放が決まったが、出席できる記者はNTTの裁量にまかされた。つまり条件がはっきりしないから、好ましからざるフリーランスは出席を断ることができる。
外務省記者クラブの開放は結構だが、どういう条件で記者の出席を許可するのかまだよく分からない。政治が官僚のメディア接触にグリップを強める動きと記者クラブ開放がへたに重なると、かえって政権にとって好ましからざる記者を排除できることになる。民主党はしっかりとしたメディア戦略を確立すべきである。
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