ある紙媒体に定期的にコラムを書いている。原稿を書き終えてから2週間くらい後に掲載される。新聞でも軟らかものといわれる紙面の記事は、締め切りは掲載日の数日前ということがある。解説や評論なら掲載まで時間遅れがあってもいいのだが、筆者としてはその間に事態が進展し、解説や評論が的外れになりはしないか、時に不安になる。原稿を書いた時点ですぐ掲載されるのが望ましい。
原稿を編集部に送った段階で、自分のblogにも掲載したい欲望に駆られる。だが、それでは編集部に失礼になる。著作権は筆者にあるので、ネットに公開しても著作権法的に問題はないが、執筆を依頼する時、未公表の原稿が両者の暗黙の了解になっているからである。
しかし、新聞記事の中には配達される前にネットに掲載される場合がある。新聞は印刷、輸送に時間がかかる。その間にネットに掲載されてしまうのだ。遠隔地に配達される新聞の場合、首都圏向けの最終版に載った記事は翌々日に載る。遠隔地の読者はネットで記事を読む方がはるかに早く読める。首都圏の読者でも自宅に新聞が届く前、早朝にネットで読める場合がある。
紙媒体への掲載を待ってからネットに掲載するのは、編集部への礼儀ではあるが、読者にとっては失礼になる。
新聞は特ダネが入ると、系列のラジオ、テレビ局に新聞が印刷されるまでの時間、放送禁止を通達するのが慣例になっている。ライバル紙に追いつかれることを事前に防ぐためだ。ネットももちろん掲載禁止になる。これも考え方によっては読者には失礼な話だ。
紙媒体は記事を独占掲載することが付加価値だと考えている。現状ではどんな筆者であろうと、掲載前に同じ原稿をネットに掲載したら、編集部から手痛いしっぺ返しを受けるに違いない。
紙媒体の読者は購読料を払って読む。ネット読者はほとんどが無料で読める。筆者には紙媒体だと原稿料が入るが、ネットではもうからない。矛盾しているが、ジャーナリストとしては両方に出したい。多くの読者に読んでもらって何ぼの世界だと思っている。
事前にネットで流せば、かえって読者が増える可能性がある。しかし、ネットで読めると購読者が減る可能性もある。どっちが当てはまるのか、まだだれも実験していない。
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