鳥インフルエンザから変異した新型インフルエンザの流行が起きたら全世界で1億人が死ぬのだそうだ。昨夜のNHKスペシャルでやっていた。新型だからワクチンがすぐには間に合わない。急いで製造しても流行に追いつかない。だから、接種する優先順位を決めなければならない。治療に当たる医療関係者にまず接種するのは当然として、優先順位をどうするのか、社会の合意を形成しておかねばならない、と番組は訴えていた。
米国政府は、インフルエンザで死ぬ可能性の高い老人を優先する方針を決めたが、これから人生を生きる若い人を優先すべきだ、との反対論が出て、広く国民の意見を聞いた結果、老人より幼児から18歳までの若い人を優先する方針に変更した。当の老人たちが自分より若い人への接種優先を希望したそうだ。そりゃそうだ。自分より子どもや孫が先に死んでいくのは見るに忍びない。自分は後回しでいいと老人になりかけた私でも思う。
沈みゆくタイタニックの乗客のうち、限りある救命ボートにだれを乗せるか。老人、子ども、女性という弱者が優先されたそうだが、それでも見苦しい座席争いがあった。タイタニックと新型インフルエンザの救命順位が同じでいいとは思えない。人の命に軽重はない。それでも生き残るべき命はだれかを選択しなければならない。まさに現代のノアの方舟である。
戦時中、海軍は学徒出陣した兵隊の中で優秀なものを主計担当にした。戦後復興に役立ちそうな人材を軍艦に乗船しない主計に任官させ、艦とともに戦死させなかったそうだ。戦後の企業経営者には、海軍主計あがりの人がたくさんいた。これも命に優先順位をつけたのと同じである。
学歴で命の優先順位をつけるなど以ての外だが、人類の危機となれば何らかの優先順位は決めなければならない。政府は早急に事実を明らかにし、国民の理解を得る努力をしなければならない。米国と同様、老人が最後になったとしても文句をいう老人は少ないだろう。現代の老人はしぶといから、ワクチンなどなくても案外生き残るかもしれない。
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