junhara's blog

原発と戦争

知人が「原発を並べて自衛戦争はできない」という小冊子を送ってくれた。著者は山田太郎。原発技術者とある。
福島原発事故が起きる前、２００７、８年ごろの出版らしい。地震や津波が原発を襲うのではなく、仮想敵国やテロリストらの通常兵器による攻撃で５０基以上ある原発が破壊されたら、日本は二度と人が住めない廃墟になる、という話である。
著者が描く破滅のシナリオは地震と津波に襲われた福島原発事故のケースとほとんど変わらない過程をたどる。まるで今回の事故を予測したようなシナリオである。核燃料は多重に防護されているものの、屋外の非常用電源が破壊され冷却ができなければ危険であること。建屋内に保管されている使用済み核燃料の冷却水が失われたら、放射性物質が環境に放出されたり、場合によっては再臨界にいたる恐れがある、などと指摘している。
水素爆発で建屋が吹き飛ぶくらいだから、いくら軍事的防衛力を強化しても、自爆覚悟の攻撃には防御しようがない。日本の原発は敵国やテロリストに核攻撃のチャンスを与えているのと同じくらい危険なのだと著者は書いている。
津波でも通常兵器による攻撃でも、いざという時、原発は直ちに安全な状態に戻らない。いつまでも崩壊熱を出し続ける。その熱を冷却できなければ、周辺地域は甚大な被害を受ける。それは今回実証された。
この冊子を読んで思い出した。新聞社の入社試験の面接で、編集局長からこう質問された。原子炉に戦闘機が墜落したらどうなるか。その年、九州大学の研究用原子炉の近くに米軍の戦闘機が墜落する事故があった。編集局長はそのことが気になっていたのだろう。私は「戦闘機がぶつかっても安全な設計にはなっていないはずだ」と答えた。大学では演習で机上の設計しかしたことがないから、確信を持って答えたわけではないが、なぜか納得してもらえた。
今回の事故で地震、津波に対する原発の安全対策は進んでも、この著者がいう戦争やテロに対する安全は何も保証されない。福島原発事故は全世界のテロリスト、好戦国家の指導者にかっこうの攻撃兵器、放射性物質を容易にばらまくことを可能にする兵器を提供したのと同じである。米国などは対策済みなのかもしれないが、原発を今後も推進するなら、このことを肝に銘じておく必要がある。

メンツにこだわっている場合か

今朝の朝日新聞によると、福島原発事故に対応するため、米国の原子力専門家を官邸に一時駐在させていた。日本政府の事故対応に不信を持った米政府が駐在を要求、官邸がしぶしぶ認めたようだ。
いまも駐在しているのかどうか、は触れられていない。平時なら米国の要求はとんでもないことだが、菅政権の事故対策が後手後手に回っている以上、核の経験が豊富な米国の智恵を借りるしかない。メンツにこだわっている時ではない。
米国は事故情報がなかなか開示されないことに相当いらだっていたに違いない。菅政権のリーダーシップのなさにもうんざりしていただろう。日本の原子力専門家の間にも、核で十分な経験を積んでいる米国に素直に助けを求めるべきだ、という声が以前から強い。
これまでの対策、無人偵察機による上空からの写真提供、冷却には真水を使えという提案、漏れた汚染水を貯めるバージ船の提供、格納容器の水没案などいずれも米国からの提案、提供である。昨日原子炉建屋内に入って写真撮影したロボットも米国からの提供だ。日本人にはアイデアもハイテクもないのか、とがっくりするほどだ。汚染された冷却水を浄化して格納容器に戻すアイデアもフランスのアレバ社のアイデアだと聞く。
これほど無能なら、官邸の半分を米国に明け渡してでも原発事故を封じ込めてほしいくらいだ。いまは何が日本の国益か。メンツにこだわらず、放射能を封じ込めることが最優先の国益である。「菅首相は自分の正当性を主張する。それでは反発を招くだけだ」と民主党の身内からも批判されている。素直に核先進国米国の智恵に頼るべきだ。

脱原発が増えないわけ

今朝の朝日新聞に掲載された世論調査で、「原発を減らす方がよい、やめるべきだ」が計４１％、「増やす方がよい、現状程度にとどめるべきだ」が計５６％だった。０７年の調査に比べ、「減らす、やめる」は、１３ポイント増えたが、過半数には達せず、依然原発肯定派が多いことが分かった。
事故後１ヶ月たった時点での調査だったが、他紙の調査でも同じ傾向だった。あれだけの事故があった割りに脱原発派がそれほど増えていない。チェルノブイリ事故の後、（調査方法は違うから一概に比較はできないが）原発非容認派が容認派を上回っていたが、遠くの原発事故には敏感に反応し、国内の原発事故にはあまり反応しないのは、どういうわけか。
調査結果の詳細分析が掲載されていないので、推測でしかないが、都市での容認、非容認の比率と原発が立地する地方の比率はどうなのだろう。事故があっても電力は必要だ。大都会は無事だった。そもそも死者が出ていない。それらの理由で人口の多い都市部では容認派が多く、原発が立地する地方では非容認派が多いのではないか。
自分の生活レベルは維持したい。原発のリスクを他人が引き受けてくれるなら、容認したい。そんなわがままな現代日本人の姿が見えるような気がする。
あなたの自宅、勤務先から３０キロ以内に原発が建設されるとしたら、賛成ですか、反対ですか、という質問を加えて、もう一度調査してほしい。

あと半年は続く危機

東電が原発事故終息への工程表を発表した。やはり騙し騙しの対策が並んでいた。あと少なくとも半年は危険な状態が続く。その間にどれだけの放射性物質が環境に漏れるのか、何も触れられていない。
避難住民の中にはスケジュールが示されたことを評価する声があった。だがこの工程表通り事故対策が動くのか。何の保証もない。
格納容器水没案、原子炉建屋外に冷却用熱交換器の設置、水に含まれる放射性物質のろ過装置の設置など、これまで報道されてきた対策が並んでいる。だが、これなら大丈夫という決め手がない。
放射性物質の漏れを少しづつ許しながら安定化に持ち込む方式である。その間に大地、海はどれだけ汚染されるのか。そのシミュレーションも公表させるべきではなかったのか。
海江田経産相はできるだけ前倒しで進めるよう求めたらしいが、対策が遅れれば遅れるほど汚染は進み、損害賠償の補償金は増える。東電が負担できなければ、すべて国民負担である。また津波がきたら、台風がきたらどうするのかという指摘もある。予期せざる事態が起きたらどうするのか。準備しておく必要もある。

原発事故は収束か、終息か

今朝の新聞は、東電が発表した原発事故処理工程表を受けて、事故の収束の見通しを報じていた。この事故の終わりは収束なのか終息なのか、どちらなのだろうか。
私はずっと終息を使ってきた。まるで疫病の終息を待つ気分に似ていたからだ。収束は「ストが収束する」などの場合に使われる。混乱が収まるという意味で使っているのだろう。終息は能動的な意味合いが少なく、自然に終息するなど受身的表現だ。収束には人間の意図が含まれるので、東電や政府はこちらを用いたいのだろう。
もちろん原発事故を終わらせるのは人間の意図、努力が必要だから収束を使ってもいいが、原発事故は人間の意図通りに終わらない。
今回の大地震の余震はいつ終息するのだろう。こういう時は終息だ。収束ではない。原発被災者から見れば、やはり原発事故の終わりは終息ではないか。被災者の気持ちに立つと収束は使えない。今後も私は終息を使うことにする。

洗濯すすぎ水の垂れ流し

福島原発２号機のトレンチの水位がまた戻った。復水器に汚染水を戻しても元の木阿弥である。まるで洗濯機のすすぎ水を屋内に垂れ流しているのと同じだ。炉心冷却用に注入した水が炉心の汚染を洗い流して外に漏れている。建屋に貯まった汚染水は海に流れなくなった分、地下にしみ込んでいる。地下水脈はどことどうつながっているのか分からない。汚染は拡大していく。いずれは海に出て海洋汚染につながる。
米国は汚染水を貯めるタンク５基を提供するらしいが、タンクはいくらあっても足りないだろう。
汚染水を貯めることしかできないのでは智恵がない。汚染をフィルターで除くことはできないのか。ゼオライトを海に投入、放射性物質のセシウムを吸着するらしいが、まだ他に手段はあるはずだ。智恵が出てくるのが遅い。いくらカネがかかっても日本の技術の総力をあげてＳＴＯＰ　ＣＯＮＴＡＭＩＮＡＴＩＯＮ（汚染を止めろ）。

絶望を追認、希望を奪う発言

「原発周囲　１０年２０年住めない」。菅首相がこう発言した、と伝えられ地元の憤りを買っている。首相も発言を伝えた内閣官房参与も、そういう発言はしていない、と否定した。だれもが簡単に地元には戻れないだろうとうすうす感じていた。そこでの報道だから、被災者から最後の希望も奪い去る発言だった。だから地元は怒った。
原発周辺地域のどこまでが居住不能なレベルで汚染され、それがいつまで続くのかが問題だ。そのデータが公表されない段階で、不用意な発言だといわれても仕方ない。しかし、これまでもさまざまな人が、チェルノブイリ事故との比較で、何キロ圏は居住不能だろうと発言してきた。首相発言はそれらの見方を追認しただけで何も新味はないのだが、地元の絶望を追認した意味は大きい。
いつ、どこに戻れるか、は今後の放射性物質の放出とも関係する。仮に事故が終息しても廃炉までに数十年かかるかもしれない。その間も放射性物質が漏れる事故がないとはいえない。いま見通しを出せといっても無理かもしれない。だが指導者なら、避難した人々に希望を持たせる発言がほしい。
長期間地元に帰れないとすれば、避難した人はゼロから生活設計をしなければならない。居住不能地域の土地は国が買い取るなど、新生活の設計に役立つ情報を早く出してあげることが重要だ。

石棺の次は水没

朝日新聞の情報によると、福島原発事故対策で、米国は格納容器もろとも水没させることを提案しているらしい。いつまでも炉心を水で冷却していても、その水が漏れていては外界への放射性物質の放出が止まらないから、全部水に沈めてしまえということらしい。
いかにも米国西部劇風の解決案である。それを実行するには、圧力容器に大きな穴を開け（すでに開いているかもしれないが）、格納容器と圧力容器を一体的に冷却することになる。つまり核燃料を納めている圧力容器の機能を放棄することである。これでホントに終息するのならいいが、終息しなかったら、放射性物質を閉じ込める機能は格納容器だけになる。失敗した時のリスクは大きい。
これに対し、日本側は炉心の水を格納容器の外にまでパイプで引き、外に冷却装置を設置して、炉心の安定を保つ案を考えているようだ。いかにも日本的なアイデアである。きめ細かなというか、騙し騙し炉心を安定化させる方法である。
米国は一気に放射性物質の放出を止めることにこだわり、日本は徐々に放出をおさめる手法である。
どちらが環境への放出を少なくできるか、私には分からない。暴れる野獣の被害を食い止めるには、銃殺するか、騙しながらエサでおびき寄せ網で捕獲するか。そんな解決法の違いである。
たぶん日本は騙しながら捕獲する方を選択するに違いない。だが、騙しながら時間をかけて捕獲する間にどんどん放射性物質が放出される解決方法に米国側がいらだっているように見える。

事故評価レベル７に

「レベル６で済むのか」３月２５日、「限りなくチェルノブイリに近づく福島」４月３日
いずれも素人の私がＢＬＯＧで書いた記事である。
案の定、福島の事故評価はチェルノブイリと同じレベル７に引き上げられた。「素人の予測が次々と当たる不気味さ」３月２８日の通りになった。
私は決して悲観論には立たないが、事故の対応策は悲観論に立たないと有効迅速な対応ができない。事故対策が、新たな事態に即応できないでいるのは、こうした考え方に立っていないからではないか、と疑っている。
福島から放出された放射性物質は、数日前の朝日新聞の推定では、放出量はチェルノブイリの１割弱。今日の原子力安全委員会の推定は１０の１６乗から１７乗ベクレル。チェルノブイリの１割前後だという。推定放出量はオーダーとしてほぼ同じだ。
原子炉冷却のための注水は今後も続く。強い放射線を持つ水漏れは終わらない。炉内の放射性物質は漏水とともに環境に出てくる。復水器に戻すのも限界がある。当分の間、放出が止まるとは思えない。今後の放出量予測こそ推定すべきなのではないか。（レベル７発表直後の記事に誤りがありました。削除して掲載しなおしました。安全委員会の推定と朝日の推定に１万倍も違いがあると書きましたが、朝日の表記が万テラベクレルというヘンな表記だったため誤解しました）

自粛なんかしてない東京

土曜日、勝鬨橋から出る屋形船に乗って隅田川の花見にいった。屋形船は満席になると出航するらしく、ちょっとの待ち時間で乗れた。例年に比べどうなのか、聞くのを忘れた。
冷たい雨が吹き付ける天気だったが、あちこちから満員の屋形船が隅田川を登っていった。
東京は決して自粛なんかしていない。雨でもサクラを愛でにこれだけの人が出かけている。
下船してから浅草に行った。浅草も外国人観光客が減って、閑古鳥が鳴いていると、テレビは伝えていた。だが、いってみたら、電気ブランで有名な神谷バー、満員で席に着くまで２０分ほど待たされた。電気ブランを二杯飲んで帰った。
東京は自粛なんかしていない。春を楽しんでいる。築地の本願寺の前に、自粛は被災地のためにならないという張り紙が並んでいた。本願寺のご利益かどうかは知らないが、少なくともこの週末、東京は自粛などしていなかった。

 

韓国で放射能雨？

テレビニュースによると、ソウルの学校が放射能雨から子どもたちを守るため休校にした。どれくらいの線量が検出されたのか、ニュースにはなかったが、ちょっと過敏すぎる。福島から韓国上空に放射性物質が絶対に飛んでいかないとは言い切れないが、どのシミュレーションを見ても、福島から出た放射性物質の雲は東ないし、南に流れ、韓国には流れていない。
日本は核の被爆体験があるから、放射能に国民的アレルギーがある。だが、韓国にもアレルギーがあるとは知らなかった。韓国政府は空間線量を測定していないのだろうか。
中国が核実験した時は、日本でも騒ぎになった。上空を飛んできた死の灰が雨に混じって降ってくると心配した。上空の風はいつも西から吹いてくるからだ。
海流の影響で韓国に流れつくとも思えない。日本周辺から韓国に向かう海流はない。
もし私が逃げるとすれば西だ。ウオン安の韓国に逃げるのもいいアイデアだ。

松岡美術館裏のサクラ

嫌なニュースばかり続くこのごろ。ブラリと花見に出かけました。来年も花見ができればいいな。

no more NUKE power plant

my blog article was translated by j application (http://www.j-application.net/)
they plan to publish e-book about nuke accident in fukushima japan.

I don’t need nuclear power.

I majored in nuclear power engineering in the university. However, I became a newspaper reporter after my graduation. I assumed that the newspaper company initially intended to appoint me as a reporter who would cover nuclear power plants; my first assignment was in Fukui. It was in the period of time when the nuclear power plants were under construction in Wakasa Bay coast.

People often asked me why I was against nuclear power plants. I always told them that it was because they are based on unreliable technologies. These were many reasons why I could not trust them. Is it possible to handle the nuclear waste responsively? It’s not easy to protect humans from radiations. Unrecoverable damage would occur when a nuclear accident happens. I studied at a university and came up to my conclusion. I had no intention to help promoting nuclear power plants.

When I was at the Fukui branch, I wrote only the minimum amount of articles on the nuclear power plants. I had no intention to write articles such as, “A nuclear-powered fire shines at the Osaka Expo”. My supervisors certainly were not keen about my decision. Right before I moved to the Osaka branch, I wrote an article called “Wakasa Coast will be a graveyard”. Later, I have heard that it became a popular topic of conversation in Fukui, “Who wrote this?”

The science department that was a pro-nuclear power plant invited me to join them several times when I was an economic reporter after Fukui. Why don’t you join us? After I turned them down many times, I joined them in the following year of the Three Mile Island accident and stayed in the department for two years. In those days, the science department still insisted that the nuclear power plants are safe even though the Three Mile Island accident happened. I still refused to cover the nuclear power plants.

At the time of the Chernobyl nuclear disaster, I was a top reporter who was covering Ministry of International Trade and Industry (now Ministry of Economy, Trade and Industry) as a member of the economic department of the press. Although I shouted in my mind, “Hey, I told you”, I lent my hands to a group of reporters called the Global Nuclear Contamination.

Since I was young, I have been wondering if it is possible to create a society which doesn’t need nuclear power plants. Since the beginning of the informational society, I have been writing about the computer society and the internet society, believing that those would lead to curb the energy consumption. I also expected a lot from the solar cells that are natural energy. I visited to a research lab of the power cells in the United States in the mid 1980s. I saw the experiment of selling solar-powered electricity in Hawaii, too.

The efficiency of photovoltaic generation was poor in those days. If the efficiency of photovoltaic generation with solar cells improves and cars powered by hydrogen-fuel cells become popular, we can reduce our dependence on nuclear power and on oil from   the Middle East. I thought that natural gas was promising, too. I thought that if we utilize natural gas, the production of the hydrogen would increase and the fuel cells would become popular.

However, the efficiency of the photovoltaic generation is approximately 15% even now. There are only few hydrogen-fueled car are around. The dependence on the Middle East in oil is over 80%.

At last, the photovoltaic cells and the smart grid has been put on the spotlight because of the issues around the CO2 emission. Although the battery vehicles have been manufactured, it is far from being used widely. Contrary, the nuclear power plants that don’t emit CO2 are attracting attention from the public in this period of time. The progress of technologies that I viewed as ideal was slow and it was overtaken by one of the nuclear power plants technology. Although the Internet society has been progressing as I expected, it needed a lot of energy-craving data centers.

The nuclear power plants became major players of electric power generators in Japan. Our society became the one where there will be definitely power blackouts when we stop the nuclear power plants.

And here came the massive earthquake. The myth of the “absolutely safe” nuclear power plants was torn apart. The radioactive substances contaminated the surrounding areas. Something we had been feared happened. We should have constructed society that fully utilizes natural sunlight and hydrogen before this earthquake; it’s too late. Even though a journalist work with everything he could do, the nuclear power plants won’t go away because society needs them. I’m frustrated by hearing my own excuse. During the Second World War, it was probably difficult to write articles that were against the war while everybody else was gun-ho about fighting with the Allies. I assume that the two situations are similar. I was thinking this way, but this is still an excuse.

I don’t need nuclear power plants anymore. I am able to say this now. However, it is too late to say this.

人類に対する罪、地球に対する罪

福島原発から低レベル放射能汚染水を大量に海洋投棄したことは国際法に触れる恐れがある。韓国政府が日本政府にこう抗議したそうだ。汚染されたのは海だけではない。大気も大地も汚染された。地球が汚染された。
オランダには戦争犯罪を裁く裁判所がある。福島原発事故は戦争犯罪と同じように人類に対する罪を犯したのではないか。そういう理由で告発しようという人たちがいるそうだ。
福島原発は地球規模の被曝を引き起こしたのだから、告発されても不思議はない。
ではだれをどんな罪名で告発するのか。事故に的確な対応ができなかった菅直人首相なのか、東電社長なのか、原子炉メーカーの社長なのか、原発を推進した歴代の自民党総裁、首相なのか、原子力の安全規制に携わった学者、官僚なのか、原発推進論を書いたジャーナリストなのか。だれが被告なのか。それだけでも大いに議論のあるところである。適用する罪名は何か。いずれも難しい問題だが、２１世紀の東京裁判ならぬ福島裁判を開廷する意義はある。
私はジャーナリストとしては良心的兵役拒否ならぬ良心的原発拒否である。原発推進の原稿を書きたくないが故に、関わらないようにしてきた。しかし、危険を知っているのに書かなかったという罪が断罪されるかもしれない。不作為の作為か、未必の故意かは知らないが、こんな大事故が起きるかもしれないと知りつつ何もしなかった。それが告発されるかもしれない。
原発は安全だと主張してきた人の罪は、私よりは重いだろうか。いまもなお原発は現代社会の利便性を維持するためには必要だという人の罪はどれくらいだろうか。
いまはだれが悪いとか何罪に相当するか考える余裕はない。だがいずれ事態が終息した暁には考えなければならない。

限りなくチェルノブイリに近づく福島

事故った福島原発は軽水炉だからチェルノブイリの被害を上回ることはない。そういう説が一般的だ。炉心にある核燃料はたとえ溶融しても圧力容器内にとどまり、環境に放出される放射性物質はチェルノブイリよりは少ないというのが理由だ。果たしてそうか。なぜそういえるのか。
１－３号機の炉心はすでに２０％から７０％破損している。燃料ペレットが炉心の底にたまり、再臨界に達する可能性はないのか。これが起きたらお終いだから、あえて書かなかったが。大前研一さんも再臨界の可能性について指摘しているので、掲載をためらっていた原稿を引っ張り出し、書き直している。
再臨界はウラン、プルトニウムが一定量、これを臨界量というが、集まると自然に連鎖反応が起きることをいう。東海村の核燃料製造企業ＪＣＯで起きた臨海事故を思い出してほしい。バケツで汲んだ核燃料溶液をプールに入れていた過程でこの臨海が起き、従業員２人が強い中性子線を浴びて死んだ。同じことが原子炉内で起きないとはいえない。もちろん核燃料の濃縮度、落ちて固まった燃料の形状にもよる。
チェルノブイリでは連鎖反応が続いている炉心が丸出しになり、環境へ大量の放射性物質が放出された。福島で再臨界が起きたら圧力容器も格納容器も大きく破損する。こうなったら最後である。
冷却水に中性子吸収剤のボロン（ホウ素）を大量に投入し、再臨界を防ぐしかない。米軍がホウ素を大量に入れた真水をバージ船で提供しているのは、これを心配しているためだろう。
大前さんは再臨界になっても、燃料が飛び散るだけで核反応はすぐに止まると考えているようだが、確かめているのだろうか。
汚染された水の流出も問題だが、炉内の燃料の挙動も気になる。
米国は石棺化を要求しているらしいが、石棺化しても炉心の中まで石棺化しないと再臨界の心配は残る。
福島の事故は限りなくチェルノブイリ級に近づいている。

花見を自粛してどうする

花見を自粛する動きがある。町内会も自粛らしい。花見は日本古来の優雅な遊びだ。電力もいらない。ただ歩いて花を楽しめばいい。それを自粛してどうするのか。
サクラを見ながら酒を飲み、ドンちゃん騒ぎを自粛するのはいい。
下町育ちだから上野の山の花見には思いがある。だがいつごろからか、花見の後片付けに地元の主婦が狩り出されるようになった。地元に迷惑をかけるこんな花見はもっと早く自粛してほしかった。
だがなぜ自粛なのか？大震災被災者を慮ってか。それとも福島原発から流れてくる放射能が怖いのか。これほど国内需要がへこんでいる時、例年以上にドンちゃん騒ぎをして内需を高めてくれないと困る。飲んで食ってくれないと困る。
古来、日本人の習性は花より団子。サクラは言い訳にすぎなかった。ただ騒ぎたい、飲みたいのだ。他に理由はない。だから被災者に配慮して自粛しているわけではない。こんな時に酒飲んで騒いでいたら人様に何いわれるか分からない。だから自粛なのだと私はと考える。
「だったら、こちとらはひとりでも花見で楽ししんでやろうじゃないか。ことし自粛したつまらねえ連中は来年以降も花見にくるんじゃねえぞ」。

高濃度汚染水 海へ

汚染された水が海に流れ出た。臨時ニュースで流れた。１０００ミリシーベルト毎時以上の放射能がある。直接水の放射線を測っているわけではなく、６０センチ離れた場所の空間線量である。危険な量である。コンクリートの溝に貯まっていた汚染水がひび割れを通じて漏れたらしい。漏れた総量は分からない。海に出たら拡散する。回収などできない。海も汚染される。
次から次と汚染のニュース。エンドレスだ。ニュースを見るのも読むのも嫌になる。国民に放射能に慣れさせ、免疫を植えつけようとしているかのようだ。

技術者よ立ち上がれ

福島原発の現場で多くの技術者が悪戦苦闘している。自らの命を賭けて。だが、日本の原子力技術者の多くは、この危機に直面してなお沈黙している。
原子力を学びながら、原子力を捨てた私に言える義理などないことは承知している。それでも何も知らない人よりは、この危機の重大さは分かる。
私は原子力の同窓生に奮起を促すメールを送ったが、だれも返答がなかった。それぞれが危機を打開する努力をしているとは思うが、それが見えてこない。
科学者や研究者だけでは、この危機は回避できない。技術者の衆知を集めることが必要だ。だが、メディアに登場する専門家は、現段階では健康に影響はない、安全だというだけである。みな同じである。
原発の現場を知っているのは技術者である。もっと知っているのは原発を建設し、その後運用に協力してきた下請け労働者である。事故対策に体を張って、いや命をかけて奮闘しているのはこの人たちである。東京にいる東電や保安院の連中ではない。まして原子力安全委員会の偉い先生でもない。
東電や保安院、安全委員会がいっていることはホントに正しいのか、確かめるためにも現場をよく知る技術者からの発信がほしい。ジャーナリストも現場に行けない。一方的な情報しかない。いまは大本営発表と何ら変わりがない。
現場をよく知る技術者は、なぜ沈黙しているのか。批判にさらされたくない気持ちは分かるが、それでいいのか。諸君は国民の税金で原子力を学んだ。特に国立大学で学んだ人は、今こそ国民に恩返しすべきではないのか。この期に及んで沈黙する技術者は許せない。

原発は代替できる

これだけの原発災害を経験しても、原発はなくせない、という人は多い。その最も説得力のある理由は発電規模の大きさと発電コストが安いという問題である。
屋根の上の太陽光発電。コストはキロワット時約５０円である。原発が約５円。このコスト差は簡単には埋められない。
原発の発電コストには隠されたコストがある。最近でこそ再処理コストを原価に入れるようになったが、過去からずっとコストとして原価計算に入ってなかった。最終処分のコストは入れているだろうか。
そして原発災害のコストはもちろん原価に算入されてはいない。これらのコストを全部発電コストに繰り入れたら果たしていくらになるのか。だれか計算してくれないだろうか。
一方、太陽光発電。発電コストはまだまだ高いが、今後は量産効果が期待できる。震災復興住宅の屋根にすべて太陽光パネルを設置すればコストは下がる可能性がある。もちろん発電効率アップの研究も進んでいる。光電変換効率を５％アップすれば、それだけコストは下がる。
日本の周りは海。経済水域は大きい。海に太陽光パネルを並べる手もある。パネルを乗せるいかだなど日本の造船技術で簡単に増産できる。
海よりもっと広いフロンティアがある。宇宙に太陽光発電基地を建設する。宇宙ならいくらでもパネルを広げることが可能だ。その研究をしている人は日本にいる。宇宙発電所から地上にマイクロウェーブで送電する。
こんなことがあってはいけないが、もし原発周辺の農地や宅地が放射能で汚染され、耕作も居住も不可能になったら、そこにパネルを並べ発電することも可能である。
それらをすべて合計するとどれくらいの発電能力になるか。だれか計算してほしい。
さらに被災地にスマートグリッドを建設する。太陽光発電などをネットワークで結び、効率的配電をすれば、送電ロスもほとんどゼロになる。送電ロスがなくなれば、原発１機分の電力くらいはたやすい。
天然ガスを利用した燃料電池を利用する方法もある。太陽電池と燃料電池を組み合わせれば一般家庭の電力は十分まかなえる。産業用電力はガスタービン発電で自家発電でまかなう。節電も不要だし、停電を求められることもない。
コジェネという熱電併給システムも大いに利用可能。すでに多くの地域で導入されている。
バイオ燃料も利用可能だ。米国みたいに穀物を原料にエタノールを生産するのは、食糧危機を生み出すだけでばかばかしい。微生物を利用したバイオ技術におもしろい技術の芽が日本にはいくつもある。
常温超伝導技術を利用すれば、電力の貯蔵も可能になる。それらを総動員すれば、原発なんていらなくなる。日本にはそれを実現する基礎がある。こうした夢と目標を掲げて前進すれば国内需要は地震の損害を上回る成長を遂げることができる。
地球を汚染してしまった日本。これらの実現可能な夢を実現することこそ、地球に責任を取ることになる。この構想が実現すれば日本こそ地球を救う国になれる。