情報サービス産業協会(JISA)という団体を知っていますか。ITオタクでも知らない人は多いはずだ。コンピューターの受託計算、業務ソフト、パッケージソフトの開発などからスタートした業界で、現在は、システムインテグレーターとしての役割、つまりさまざまな情報システムを開発、構築する役割を担っている。売上高だけで計ると十数兆円もある。日本のITを底辺で支える業界といっていい。米国ならマイクロソフトやIBM、オラクルといったそうそうたる企業が集まる団体である。その会長に新日鉄ソリューションズの棚橋康郎会長が30日就任した。
JISAが発行していた情報サービス産業白書の白書委員などをしていた関係で、20年近い付き合いがあるが、この業界の社会の認知度は相変わらず低い。若い人がもっと魅力を感じる業界への変身をといい続けてきたが、大手メーカーの下請け、人材派遣会社という体質から抜けきれないまま今日に至っている。
新会長は就任あいさつで、ITを支える基幹産業としての自覚を持て、家内工業的産業から脱皮し国際競争力を持て、安値受注を繰り返す業界体質の改善、不正経理など不明朗な会計の排除、そして何より魅力ある業界への変身を呼びかけた。会員に厳しい改革を求める異例ともいえる就任あいさつだった。
しかし、会長が呼びかけただけで、変身できるなら世話はない。この業界が日本の国民と産業の期待に応えられる業界に変身できるかどうかは、日本の将来がかかっている。
IT関連予算が増えるにつれ、JISAのパーティーには政治家の姿が目立つようになった。政治家にだけ魅力ある業界になってもしかたがない。
これからどう変革するか、新会長の手腕にかかっているが、ややこしいことはさておき、まず国民にもっと知ってもらうために、名前をJISAからIT産業協会に変更することから始めてはどうか。情報サービス産業なんていったって、だれもピンと来ないのだから。改革が進んでもこの業界から和製マイクロソフトや和製オラクルが出てくるとは思えない。だが、普通の国民やユーザーにもっと関心を持ってもらうことが、おざなりな受発注を排除することにつながり、健全な業界に変身する第一歩だと思うのだが。
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